「成年後見制度」なんか利用しなければよかった……弁護士を後見人にしたら、明るい人生が暗転してしまった話
破壊された暮らし
香川さんが家裁に提出した書類には、一家のほほえましい暮らしが記されている。一部を抜粋する(原文ではすべて実名)。 『私は、俊彦の大好きなNHKの朝ドラマを俊彦と一緒に観ながら、朝食は俊彦の部屋で一緒に食べ、夜は、俊彦の部屋で寝る時もあり、私が食事を終え、二階の俊彦の部屋に行くと俊彦が布団を敷いてくれていました。私が「誰、布団を敷いてくれたの?」と俊彦に聞くと、俊彦は自分の鼻を指さして「私だよ!私です!」と言いました』 『俊彦は、どんな小さなことをしてあげても「父ちゃんありがとう。○○ちゃん(私の妻の名前)、ありがとう」と言い、とても思いやりがあります』 だが、この生活は、家裁が選任した後見監督人弁護士の介入により、突然、破壊された。 きっかけはA弁護士が、家裁に2年分の報告書の提出を怠ったことだった。監督人の仕事は、後見人の香川さんが作成した後見事務報告書や財産目録などの内容をチェックして、年に一度、家裁に簡単な後見監督事務報告書を提出すること。報酬は年間20万~30万円で、障害者である俊彦さんの口座から支払われる。 『成年後見制度はなぜしくじったのか』の著者である仲島幹朗司法書士によると、「後見監督人や後見人になる弁護士、司法書士の大半は、福祉に興味がなく、小遣い稼ぎ感覚で家裁から業務を請け負っているのが実態」という。
書類の提出を怠って
真由さんによると、A弁護士は就任当初からまったくやる気を見せず、香川さん一家が弁護士事務所に電話しても居留守を使った。さらにA弁護士は監督業務の一貫として、香川さんが作成し家裁に提出予定だった2年分の報告書を預かりながら家裁への提出を怠った。「忘れていた」という。 そこで家裁はどうしたか。こともあろうに後見人の香川さんの怠慢を疑い、新たにK弁護士を「調査人」として派遣したのだ。 調査の結果、K弁護士はA弁護士の怠慢が原因であることを確認。香川さんの後見人としての仕事ぶりについて「これだけキチンとやっている後見人の方はいらっしゃらない」と香川さん親子に言った。 家裁は、自らが選任した監督人の怠慢について香川さん親子と俊彦さんに一切謝罪しなかった。また調査人の報酬5万円について、香川さん一家は「A弁護士の怠慢が原因なのだからA弁護士が支払うのが筋」と主張したが、家裁は俊彦さんの口座から支払わせた。 恐らく家裁は、K弁護士をA弁護士の後任に据えるつもりで調査を依頼したのだろう。A弁護士の辞任を受け、K弁護士を後任の監督人に選任した。 当時のK弁護士のホームページには、弁護士会の成年後見委員会副委員長や高齢者・障害者連絡協議会委員などの肩書が記されており、香川さん一家は「成年後見や障害者の人権に理解のある弁護士ではないか」と思った。 だがK弁護士が監督人になったことで、俊彦さんの人生は暗転する。