「成年後見制度」なんか利用しなければよかった……弁護士を後見人にしたら、明るい人生が暗転してしまった話
「安易に利用すべきではない」
「私たち家族は成年後見制度を利用してしまったことを心底悔いています。利用したことで私たちの心はズタズタに切り裂かれ、いまも苦しみは続いています。 【マンガ】3500万の住宅ローン組んだ「年収700万夫婦」が見た「地獄」 家庭裁判所はこれまで3人の弁護士を私の従兄の後見人や後見監督人に選任してきましたが、1人目の後見人は私たち親族の前で従兄を“ペット”と呼んで嘲笑し、2人目の後見人は、何も仕事をしないのに従兄の預貯金からいまも報酬を取り続けています。 私たち家族は、この14年間、繰り返し家裁に改善を強く求めてきましたが、家裁は弁護士後見人の肩を持ち問題を放置してきました。この制度はいったん利用したら途中で止められません。自治体などから利用を勧められても安易に利用すべきではないと思います」 そう語るのは東京都在住の香川真由さん(49歳・仮名)だ。 成年後見制度は認知症や知的障害者に後見人をつけて、財産管理や各種契約を代理する制度。2000年にスタートし、現在、約24万人が利用している。だが後見人の8割以上を弁護士、司法書士らが独占し家族が滅多に後見人になれないこともあって、全国でトラブルが多発している。 2022年には、国連「人権委員会」が日本政府に「差別的な日本の成年後見制度の廃止と民法改正」を勧告。これを受けて、2024年4月から法務省法制審議会(法相の諮問機関)で制度改正に向けた議論が始まった。
1億円以上の預貯金があった
真由さんの従兄の中山俊彦さん(69歳・仮名)にはダウン症の障害がある。真由さんの父、香川康夫さん(80歳・仮名)は俊彦さんの父の弟に当たる。 俊彦さんは資産家の両親の一粒種。情愛に溢れた両親のもと、俊彦さんは施設に入らず自宅で大切に育てられた。両親が亡くなった後の2011年、身寄りのない俊彦さんの後見人になることを叔父の香川さんが家裁に申し立てた。 この時点で俊彦さんには1億円以上の預貯金があった。このため家裁は親族後見人の香川さんによる不正防止のため、A弁護士を後見監督人に選任した。 香川さんは、俊彦さんを香川さん宅に引き取り、我が子同然に可愛がった。後見人としても、俊彦さんの財産を管理して医療介護の契約を結ぶなど、俊彦さんの生活を支えた。俊彦さん名義のアパートなどの管理も問題なくこなし、真由さんら家族も、後見人としての香川さんの活動を支援した。 俊彦さんは、香川夫妻を「父ちゃん、母ちゃん」と呼び、実の両親のように慕った。真由さんも、年上の従兄を「俊彦」と呼んで、実の弟のように大事にした。