UFC人気スターのマクレガーが“堀口カーフ”でTKO負けの大番狂わせ…パッキャオ戦消滅で再起戦プランはどうなる?
両手を突き上げてオクタゴンを一周したポワリエは、「ハッピーだが、サプライズではない。満足はしている。コナーは、プロ中のプロ。試合を受けてくれたことに感謝しているしリスペクトしている。だが、今日はオレのいいパンチが当たった。なんでもタイミングが大事なんだ。今日はオレの勝利だった」と、淡々と試合を振り返った。 UFCのライト級では王者のヌルマゴメドフが引退を宣言しているためランキング2位のポワリエと4位のマクレガーのこの試合が事実上のライト級頂上決戦と言われていた。それゆえ、ポワリエも「これがタイトルマッチと言ってもおかしくないだろう。オレがチャンピオンだ」と吠えた。 互いに健闘を称え合った後にマクレガーもオクタゴン内でインタビューに応じた。 「長く試合から離れていたからね。この結果は仕方がない。足に(カーフが)効いてしまった。スタンドで動ききれなくなった」 やはりカーフキックが勝敗を分けたのだ。 ポワリエのセコンドにはATTの“名参謀”マイク・ブラウン氏の姿があった。堀口が大晦日の「RIZIN.26」で朝倉海にリベンジを果たした際にも来日し、「カーフキックから崩す」という戦略を授けた名トレーナーである。堀口が朝倉の足を破壊したカーフキックは、通常のローキックとは違い、膝下のふくらはぎをピンポイントで狙ってダメージを与える特殊なキック。この数年で、MMAの世界でトレンドになっている武器だが、マイク・ブラウン・トレーナーは、「カーフを総合で最初に使い始めたのはATTなんだ。うちがカーフの発祥の地だ」と自負していた。 堀口もカーフの効用を「一度ダメージを与えると、それがラウンド中に回復しないのがカーフの特長」と説明していた。 試合後の会見に松葉杖をついて現れたマクレガーは「防ぐ動きはしたが、私の足は完全に死んでいた。筋肉が破壊されてしまった。まるでアメリカンフットボールの試合後のようにだ。だから焦って勝負に出たんだ」とも語った。ATT直伝の“堀口カーフ”が大番狂わせを起こしたのである。 ポワリエも、堀口同様、リベンジ戦だった。両者は2014年9月に「UFC178」でフェザー級で対戦していて、その時はマクレガーが左フックを炸裂させ、わずか1ラウンド1分46秒でTKO勝利を収めていた。今回は階級を上げて6年4か月ぶりの再戦になったが、戦略家のマイク・ブラウン氏が、カーフでダメージを与えながらの待機戦法を授けたのだろう。ポワリエは、1ラウンドには、片足タックルからテイクダウンを奪い、ケージ際で組み合い、マクレガーが得意とする打撃戦の時間を作らせなかった。 一方のマクレガーは、パンチを見切り左ストレートからトリッキーな右アッパーを何発もヒットさせるなど1ラウンドは優位に運んでいたが、そこで仕留めきれなかったことが響いた。 「ポワリエは堅実でいいディフェンスをしていた。私がパンチで攻めたときも彼はよく守った」とマクレガー。カーフキックを腕でキャッチして反撃に転じるシーンもあったが対策は不十分だった。