5人全員が「異例の下積み時代」を経験している…日陰にいた「嵐」が国民的アイドルグループになれた本当の理由
■“ジャニーズ興行保証”が発掘した才能 映画も演劇も、言うまでもなく、興行が重要になってくる。どちらも基本的にはチケット代が収入源であり、観客をどれだけ動員できるかによって、収益が大きく変動するからである。 その見通しがきちんと立っていない状態で作られる作品も多いため、ビジネス的な観点からは博打呼ばわりされることもあるほどだ。 だが、ジャニーズのアーティストが出演することにより、そこにある程度の保証がつくことになる。確実に足を運ぶファンのいるジャニーズアーティストの出演によって、一定数の観客動員の見込みがつくのである。稽古開始時点でチケットが完売しているというような、他の舞台からすれば羨ましいケースが多数存在しているのである。 これには、興行面だけではなく、作品の中身にも大きなメリットがある。一般的に、作品を大衆的にすればするほど、作家性は削られていく。多くの観客にウケようとするあまり、過激な表現は抑えられたり、強いメッセージ性が削られたりしていく傾向にある。 ■未来の朝ドラ脚本家も生まれた だが、ジャニーズアーティストが出演することによりその必要性はなくなっていく。興行面での保証があるからこそ、映画監督や劇作家は表現を尖らせ、遠慮することなくその才能を発揮できる。“ジャニーズ興行保証”の安心の土台の上に作品作りに専念できるのだ。 さらに、この“ジャニーズ興行保証”は、若手の尖った才能を発掘するのにも有効に機能した。特に2000年代後半から2010年代前半にかけてのグローブ座は、才能はあるがまだ世に出ていなかった若手の演出家を積極的に登用していた。 西田征史(にしだまさふみ)がそのひとりだ。『夢物語は終わらない 影と光の“ジャニーズ”論』(文藝春秋)の第2部の最初に紹介した『@ザ・グローブ・プロジェクト』で脚本・演出を担当、その後多くの作品に携わり、9年後には朝の連続テレビ小説『とと姉ちゃん』の脚本を担当するまでになる。 『バイプレイヤーズ』や『くれなずめ』など現在は多くの作品を監督する松居大悟(まついだいご)も「劇団ゴジゲン」を立ち上げて活動をしていたが、慶應義塾大学在学中に初の商業演劇をこの東京グローブ座で手掛けることとなった。彼らの才能が多くの人の目に触れ、そして経験としてもステップアップできる機会となっていたのである。