【Q&A】「日本学術会議」とは?
菅義偉(よしひで)首相が、「日本学術会議」の会員候補となっていた大学教授6人の任命を拒否した問題が注目されています。多数の大学や学会などが首相側に抗議声明を出す一方で、多数の誤った情報がSNSなどを通じて広がりました。そもそも日本学術会議とはどのような組織なのでしょうか。解説します。
Q:いつ設立された、どのような組織なの?
日本学術会議は、日本の科学の向上を図るため1949年1月に設立されました。内閣総理大臣の所轄であり、国から活動予算が出ていますが、政府から独立して職務を行う内閣府の機関です。 全国の科学者の代表として選出された210人の会員と、委員会などで会員と活動する約2000人の連携会員で構成されています。(連携会員は学術会議の会長が任命) 東京都内に拠点を置き、(1)政府や社会に対する提言(2)科学者間のネットワークの構築(3)国際会議の開催――などの役割を職務として担っています。
Q:会員はどう選ばれるの?
日本学術会議法には「優れた研究や業績がある科学者から会員候補者を選考し、内閣総理大臣に推薦する」と定められています。2005年、投票方式から変更され、いまは会員が会員候補を推薦する形で、半年をかけて候補が決定されています。会員の任期は6年で再任はされません。3年ごとに半数の105人が任命されます。 会員の身分は特別職の国家公務員で、70歳が定年となっています。
Q:予算とその使い道は?
日本学術会議によると、2020年度の予算は約10億5000万円です。このうち約50人の事務局職員らの人件費が約4億3000万円となっています。会員と連携会員が総会などに出席した際には日当が支払われています。 総会や会議に出席するため、連携会員を含めた全会員には、交通費として1人当たり年6万円程度が支給されています。学術会議側の説明によると、その額を超えても多くの会員が自費で会合に参加しており、「ボランティアワークに近い」としています。
Q:任命拒否問題について教えて。
学術会議の会員の任命や活動をめぐっては、吉田茂、中曽根康弘両元首相が政府からの介入が不適当だとの認識を示すなど、歴代の首相が介入することはなかっただけに、菅首相の任命拒否は異例です。 菅首相は「大学にも偏りがある」などと説明していますが、6人の中には、他に会員がいない大学に所属する教授も含まれているなど、論理的な答えにはなっていません。 学術会議の梶田隆章会長は、活動に「著しい制約」があるとして、拒否した理由の説明と6人の任命を改めて求めています。 一方で、政府や自民党では学術会議のあり方を見直す議論を始めており、非政府組織とすべきなどという声もあります。