AIを使ってもテストの点はとれない? ドイツの大学生の調査から見えてきた、生成AIを使うリスク
AIの適切な利用法
こうしたメカニズムが学生の学力低下に関係したと考えられるが、一方で研究者らは、「教育において適切に利用すれば有益なツールになる」とも主張している。 具体的には、学生たちに対し、「ChatGPTを補助的な役割に限定する」ことを推奨している。生成AIの要約能力や解説能力を活用しつつ、自力で深掘りして理解を深めるのである。またAIの回答を批判的に評価し、その信頼性を検証する姿勢を持つこと、AIを使用する場面を選び、特に考える力が求められる課題には自力で取り組む練習をすることも勧めている。 過度な依存を避け、自分で考えたり調べたりする時間を確保することで、ChatGPTを学びの効率化や補助として適切に利用できるわけだ。 何か便利な新技術が登場すると、その利便性から多くの人々に採用される一方で、それまで人間が持っていた能力が失われるのではないかという懸念の声も生まれる。たとえば古代ギリシャの哲学者ソクラテスは、「文字を使うと記憶力が弱くなる」と主張したと、弟子のプラトンが記している。 もしかしたら古代ギリシャの人々は、現代人よりも記憶力が良かったのかもしれない。しかし現代人は、文字を巧みに活用して、古代ギリシャよりもはるかに進んだ文明を築いている。仮にChatGPTが、本当に人々の学力を低下させるものだったとしても、私たちはいずれ、この技術との適切な付き合い方を編み出すだろう。それまでは個人個人が、弊害の少ない使い方を工夫していくしかない。
小林 啓倫