投票率、対ロ・対中外交、参政権……在日外国人が考える、日本の選挙と政治
台湾人から見た日台関係と、日本の政治の「古さ」
「台湾人は〝いまの状況をキープできれば〟と思っている人が多いと思いますよ」 来日14年になる張維中さん(46)。訪日台湾人向けのガイドブックやウェブサイトを作成しながら、東京生活を綴ったエッセイなどを執筆する作家・編集者だが、参院選の争点「外交」では、やはり日本と中国との関係が気にかかる。 「日本には、台湾ともっと親しくなってほしい。でも、あまり接近しすぎると、中国との対立が深まるでしょう。そんな危険を冒すよりは、経済的にも安定したいまの状況が続けば、と」 台湾人にとって政治とはずっと、中国との関係を模索することでもあった。平和で豊かに見える台湾だが、張さんも中国の脅威を常に感じながら生きてきた。その切迫感が、政治意識の高さにもつながっている。 「2020年1月の総統選挙のときは、日本に住む台湾人は投票するためにみんな帰国したんですよ。遠いヨーロッパやアメリカからも、たくさんの人が〝選挙帰国〟しました。偉いと思う(笑)」 海外に住む台湾人は在外投票できず、帰国して直接投票する必要があるからだが、張さんは仕事の都合でどうしても帰国できなかった。 「するとね、まわりの台湾人からのプレッシャーがすごいんですよ。なんで投票しないんだって」 蔡英文氏(65)が再選した2020年の総統選の投票率は74.9%だ。この関心の高さは、ときにトラブルも生む。 「支持政党の違いで、友達や家族の間で本気のケンカになることもあるんです」 熱すぎるのである。選挙のたびに、たとえば民進党支持の母と国民党支持の父が揉めたりもする。 「選挙のときにはまず、家庭の平和をどう保つかって問題もあるんです(笑)」 一方で日本の投票率は台湾よりはるかに低い。政治に言いたいことがあっても投票には行かず、SNSで呟いて終わりという若者が多いと、張さんには映る。 「でも、それは選挙制度にも関係があると思います。台湾では国のトップ、総統を国民が直接選べるでしょう。そのほうが選挙に参加しやすいのかもしれない」 加えて日本は、台湾に比べて政治的リスクが少ない。現状を変える必要がない。そうなると政治意識も育ちにくい。良くも悪くも台湾から見れば日本は安定した国のようだが、そこに綻びが見え始めていると張さんは言う。 「日本政府のコロナ対策の遅さだとか、USBの存在を知らないサイバーセキュリティー担当大臣の話は台湾でも話題になりました」