マツダの新型「CX-80」はいいぞ! 旗艦SUVとしての完成度に大満足。【試乗レビュー】
マツダの新型SUV「CX-80」に初試乗。大きなボディからは想像もつかない圧倒的な走行性能と、乗員全員の快適性を追求したというフラッグシップモデルの実力や如何に? モータージャーナリストの原アキラがPHEV/MHEVモデルを乗り比べ! 【写真】これは良い仕上がり! 新型CX-80こだわりの内外装がこちら(全36枚)
不安は解消されるのか?
マツダのフラッグシップSUV「CX-80」に徳島、淡路島、神戸で試乗。プラグインハイブリッド(PHEV)とマイルドハイブリッド(MHEV)という2つのパワーユニットによるプレミアムな3列シートSUVの走りをリポートする。 マツダのラージ商品群というと、約2年前に乗ったCX-60のことを思い出す。FRベースのボディに大排気量直列6気筒ディーゼルターボエンジンとシャープな8速ATを組み合わせることで期待を抱かせたその走りは、良路でのコーナリング性能は抜群なのだが、路面が荒れたところではリアから強烈な突き上げをくらい、ATはギクシャクした感覚を伝え、アイドリングストップからの復帰では大きな振動と音を伝えてきて、プレミアム感という点では及第点が与えられなかった。 今回のCX-80はそのステレッチバージョン。トップモデルは700万円以上という高額商品なので、そこが変わっていなかったらどうしよう、という一抹の不安があったことを正直に告白しよう。 試乗前に挨拶に立った商品開発本部の柴田浩平主査の「CX-80のポジションはマツダのフラッグシップ。心の豊かさをもたらす『グレースフル(優美な)ドライビングSUV』を商品コンセプトとし、ユーザーの多彩な趣味や使い方に対応することに加えて、乗員全員が気持ちよく過ごすことができる2列目、3列目空間を実現しています」の言葉を信じて、ドライブを開始した。
これぞSUVトップモデルのPHEV
CX-80のパワートレインは、2.5リッター直列4気筒ガソリンエンジンのPHEV、3.3リッター直列6気筒ディーゼルターボエンジンのMHEV、3.3リッター直列6気筒ディーゼルターボのみの3つがあり、今回乗ったのは前の2台だ。 最初に徳島から神戸を目指して110kmほど走ったのは、「e-SKYACTIVE PHEV」を搭載したソウルレッドクリスタルメタリックの「プレミアムスポーツ」。719万9500円というプライスタグを掲げるトップモデルという立ち位置だ。 ボディサイズは全長4990mm、全幅1890mm、全高1710mm、ホイールベース3120mmで、CX-60より長い全長とホイールベースの250mm分が、3列目シート用のスペース。パワートレインは、最高出力138kW(188PS)/6000rpm、最大トルク250Nm/4000rpmを発生する縦置きの2.5リッター直列4気筒直噴ガソリンエンジンと、129kW(175PS)/270Nmのモーター、床下の容量17.8kWhのリチウムイオンバッテリーを組み合わせたPHEVシステムで、トルコンレスの8速ATによるi-ACTIV AWDモデルだ。 エクステリアはCX-80の証となる縦3本の小さなメッキパーツを備えた垂直なフロントグリルや、FRらしいリア寄りのキャビン、ボディサイドの深く抉られたデザインを持つ。そして、タンのナッパレザーシートやバックスキンのダッシュボードなど、しっかりと作り込みがなされたインテリアの組み合わせは、他の国産SUVと比べても白眉、と言えるほど素敵。 さらにその走りは、しっかりと改善されていた。突き上げ感のあったリアは、スプリングのレートを下げるとともにバンプラバーの長さを短くしてストロークを稼ぎ、締め付けが厳しかったリアスタビライザーを廃して、乗り心地の良さをかなり取り戻している。 8速ATも制御方法を変え、乗員にショックを伝えない。高速では静かなハイスピードドライブができ、一般道に降りて走ったワインディングでは、リアサスのKPC(ロードスターで取り入れたキネマティック・ポスチャー・コントロール)を生かした、狙ったラインをきちんとトレースできるスポーツドライビングを楽しませてくれたのだ。 そして、ノーマルモードではなるべく電気だけで走ろうとするコントロール(モーターだけでの航続距離はWLTCモードで67km)が印象に残った。「日本の工場地帯にある相当に荒れた道路から、ドイツのアウトバーンやニュルブルクリンクサーキットまでという幅広いコースを走り込んで両方のバランスをとったので、その熟成には時間がかかりました」という前出の柴田主査による走りを体験できた。