「チクテベーカリー(CICOUTE BAKERY)」(南大沢)店主北村さんがパンを通じて運ぶ“小さな幸せ”
「チクテベーカリー(CICOUTE BAKERY)」(南大沢)店主北村さんがパンを通じて運ぶ“小さな幸せ”
多摩ニュータウンの一部として開発された南大沢。新宿からは約1時間程度の八王子市にある、行列が絶えない店「チクテベーカリー(CICOUTE BAKERY)」。団地が多いこの地で、その中でもかつては賑わっていた南大沢三丁目商店街に2013年に移転。以前の記事では、お店の紹介を中心に執筆しましたが今回は店主の北村さんに取材してきました。地元の人をはじめ、多くの人に愛され続けるその秘密を深掘りします。
陶芸家からパン職人を目指した理由にある“モノづくり”が北村さんの心を突き動かす
Q.まずお伺いしたいのが、北村さんがパンの世界へ入ったきっかけを教えてください。北村さん「もともとは美大に通い、陶芸を専攻していました。その当時からは、今パンを作っていることは想像できませんでした。美術の道は、当時やりたいことが散漫になってしまい、やることが中途半端な状態で。美術って、やはり人の日常に結び付けるのが難しく、もうちょっと単純でわかりやすい“モノづくり“は何かと考えたときに、作ったもので『美味しい』という“食”の部分に気づきました。特別なものじゃなくて、日常のものだけれどシンプルで、幸せを届けられるものはなんだろうと思いました。そこで、お菓子のように特別なものではなくて、少し敷居が低いもので、小さい子が500円玉を握りしめて買いに来られるものは『パン』だと思ったんです。手始めにカフェベーカリーのアルバイトからパンの道を歩み始めました。」Q.いきなりパンの道は、すごい決断だと思います。そこから今に至るまで、どうして続けられたのでしょうか? 北村さん「パンって難しいからこそ、続けられたと思っています。私はそれほど器用ではないけれど、パン作りには器用・不器用ではなくもうちょっと特別な別の技術が必要なものなので、飽きずに続けられました。特別な技術と言っても感覚的なもので、生地に毎日触れることや酵母たちを毎日観察する中で感じられるパンとの付き合い方みたいなものです。日々を積み重ねていく中で感じられることをまた明日へ繋げていく地味な作業が好きだったのだと思います。修業時代はよく怒られたりもしたし、決して順風満帆ではなくて、きっと誰よりもゆっくり、そして遠回りな道のりでしたが“友人と一緒にカフェとベーカリー をやりたい”そんな夢のためにひたすら前に進みました。働きながら、家でもパンを作っていました。自分のお店をやるためには、自分の味を見つけなければいけないと思いました。休日もずっと家で作っては、失敗したこと、良かったこと、細かなことも毎回データの記録をつけて失敗と反省を繰り返していたように思います。」