見えてきた立浪中日の全貌…宮本氏、落合氏、中村氏、片岡氏ら卓越した野球理論と絆で結ばれた”一丸内閣”
だが、宮本氏以外の主要ポストには目途が立った。 投手コーチには、同級生で現役時代に共に中日の黄金時代を支えてきた落合氏に白羽の矢を立てた。落合氏は引退後に評論家生活を経て韓国のサムスン、ロッテで投手コーチを務めた。落合氏は、その投球理論、投手継投や年間を通じた投手起用に関するマネジメント能力に加え、選手の声に耳を傾けるコミュニケーション能力の高さに定評がある。野球愛にあふれる指導方法への評価も高く、これまでも中日は何度かコーチ要請を行ってきたが、「いつか立浪が監督になるときに協力したい」と中日復帰を固辞してきた経緯がある。 今回は、満を持しての中日復帰。性格も明るくチームに与える影響も大きい人物だ。与田監督が築きあげた“投手王国“をさらに発展させることへの期待が大きい。 そして、来季に向けてチームを立て直す最大のテーマともいえる打撃部門には、2007年に落合博満監督が救いの手を差し伸べて、キャンプの“テスト生扱い“から育成契約を経て中日でプレーし、リーグ優勝、日本シリーズ制覇に貢献した中村氏をリストアップした。立浪氏は、当時、現役生活の晩年で打撃コーチを兼任していたが、中村氏がチームに溶け込みやすいようにフォロー。その野球に取り組む姿勢に共感した。 中村氏は、引退後に少年野球など後進の指導に積極的に取り組み、静岡県にある浜松開誠館高校の非常勤コーチを務めるなどしてきたが、立浪氏は、その打撃理論と指導方法も高く評価。チーム得点、本塁打、打率のすべてがリーグワーストという打撃部門の立て直しを任せることを決断した。 またPL学園の同級生で、プロ入り後も、中日、日ハムの垣根をこえて合同自主トレを行うなど、固い絆で結ばれている元阪神の打撃、ヘッドコーチの片岡氏にも入閣を要請した。片岡氏には、1軍の打撃コーチではなく2軍監督のポストを用意しているものと見られている。3年目の根尾、2年目の石川など、ファームには、未来の中日の中軸を担える原石がゴロゴロしているが、伸び悩んでおり、立浪氏の就任と同時にすぐさま戦力になるとは考えにくい。チームを常勝軍団として立て直すためには、生え抜きの野手をファームで鍛えて育てる必要があり、チーム再建を託された立浪氏にとって2軍監督は最重要ポストのひとつ。そこに深い信頼関係のある片岡氏を置き、1、2軍の風通しをよくしていこうという狙いもある。
また片岡氏、宮本氏ら、中日OBではない外部の人間の血をチームに入れることで、これまで見過ごしていた問題点を洗い直し、刺激を与えることへの効果も期待している。 ”与田政権”では、一部コーチとのコミュニケーション不足の問題なども露呈していたが、新生立浪ドラゴンズは、まず信頼という絆で結ばれた一丸ムードをスタッフの間で固めていく。戦力不足という決定的な問題は残っているが、正式就任を前にコーチングスタッフの構成も含めて早くも立浪新監督への期待が膨らむ。(文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)