【エルムS回顧】予想外の流れを制したのはペイシャエス 得意でない小回りでのVは大きな収穫
ハイペース想定も
GⅠ馬ドゥラエレーデを筆頭に中央地方の重賞ウイナーたちが顔をそろえ、例年より格が一段あがった印象があった。戦前のポイントは先行争い。逃げて平安Sを勝ったミトノオーや長期休養明けプロミストウォリア、マリーンSで逃げたテーオードレフォンなど先手候補が複数いて、ドゥラエレーデ、ペイシャエスら好位で粘りたい実績馬までいた。当然ながらハイペース想定。しかし、その決めつけこそが馬券を外す入り口だった。 【レパードステークス2024 推奨馬】世代トップクラスの実力、騎手は過去10年で複勝率71.4%! SPAIA編集部の推奨馬を紹介(SPAIA) 複数の逃げ馬がマッチアップするときこそハイペースにならない。展開予想あるあるだ。逆もまたしかり。確固たる逃げ馬不在だからスローとは限らない。ほかに行きそうな馬がいれば無理をしない。行く馬がいないなら思い切っていく。あえて裏をとるのは勝負の鉄則ともいえる。 もちろん、プロミストウォリアは1年ぶりの実戦復帰であり、いきなりミトノオーと競り合ってハイペースを演出するわけがないという読みもできた。蓋を開ければミトノオーのマイペース。ドゥラエレーデに終始マークされる形にはなったが、前半1000m通過推定1:01.2は決して速くない。 さすがにここ2戦重賞で逃げて2、1着のミトノオーはプレッシャーをかけられゴール前で甘くなったが、先行優位の札幌で前半が遅くなれば、差し馬はほぼノーチャンス。強力な好位勢による争いとなった。
得意とはいえない小回りで勝ったペイシャエス
制したのはペイシャエス。勝利は2年前の名古屋グランプリ以来。JRA重賞は同じ年のユニコーンSに続く2勝目となった。ユニコーンSではハイペースを好位で粘る我慢強さをみせ、ジャパンダートダービー2着、JBCクラシック3着、そして名古屋グランプリと順調な3歳シーズンを過ごした。 その後は昨年のエルムS8着など思うように先行できず、中央地方の小回りコースに苦しんできた。転機は横山和生騎手に乗り替わったマーチS。2番手で気分よく走り、ミトノオーは捕まえられなかったものの3着確保。再浮上のきっかけをつかんだ。今回も勝負所で先に手応えが悪化し、4コーナーでは右から左からとステッキが入るなど、コーナーでの反応の悪さを随所にみせていたが、直線に向くと思い直したようにしぶとく走った。小回り歓迎ではなく、大回りの広いコース向きなのは明らかだが、好位につけて抜け出せたのは収穫だ。なにより勝利したことが大きい。 父エスポワールシチーは4歳時のマーチSから5歳時のかしわ記念まで6連勝と無双した。さらに7、8歳でマイルCS南部杯を連覇し、JBCスプリントも勝った。ダートの超一流らしい息長い活躍でファンを魅了した。 産駒は2024年7月28日まで芝4勝、ダート134勝、障害2勝の計140勝。ダート重馬場の勝率が高く、短距離から中距離まで距離適性の幅が広い。フレンチデピュティやシーキングザゴールドといった米国血統との相性がよく、いかにもサンデーサイレンス系のダート種牡馬らしい特徴をもつ。ペイシャエスもここから連勝街道を走る可能性がある。得意なのは父エスポワールシチーと同じく直線が長いコース。秋以降、待ちかまえるGⅠのステージに合う。