【エルムS回顧】予想外の流れを制したのはペイシャエス 得意でない小回りでのVは大きな収穫
3着はエスポワールシチーの弟テーオードレフォン
2着ドゥラエレーデはこれまで通り積極的に流れに乗り、ミトノオーにしっかり圧をかけ、これを競り落とした。この馬の競馬はできた印象で、最後に少しだけ甘くなったのはドバイ遠征帰りだった影響だろう。これで型通りに上昇しそうで、こちらもホープフルS以来のGⅠ勝利に向け、上々の発進だったといえよう。1700mを走った経験がこの先どちらに転ぶか分からないが、タイトルを上積みし二刀流をアピールしたいところだ。 3着テーオードレフォンは相手関係を鑑み、控える作戦を選択。先行勢のなかでは格下ながら、外を回ってよく踏ん張った。流れに恵まれたという側面も確かにあるが、3番手で堂々立ち回れたのは大きい。オープン特別なら今回のようなねじ伏せる競馬で十分通用するだろう。こちらは母エミネントシチーなので、奇しくもペイシャエスの父エスポワールシチーの半弟にあたる。 4着シルトプレはただ1頭、後方から外を回って差し込んできた。差し馬にはノーチャンスだったことを踏まえれば大健闘で、価値がある内容だった。昨年のエルムSは5着で今回はひとつ着順をあげた。ダートは年齢による衰えが緩やかで、来年も十分楽しめる。2年前の北海優駿、昨年の道営記念を勝ったホッカイドウ競馬の看板馬。北の大地でJRA重賞を勝ちとる姿をみてみたい。 5着ミトノオーはマーチS、平安Sの好走ですっかり追いかけられる立場になった。遅い流れとはいえ、緩みがない1700mだと得意の離し気味の逃げにもちこめない。今回は舞台適性で劣っただけ。逃げ馬はマークが緩んだときがチャンスで、いずれ得意の形に引きずりこむ機会は巡ってくる。 2番人気ナチュラルハイは8着。好位につけられはしたが、流れのわりに早々に脱落してしまった。相手が強かった面もあるが、大沼S、マリーンSと戦い、状態が下降していた可能性もある。ひと息入れずに次走出走なら、人気であっても疑っていいかもしれない。 ライタープロフィール 勝木 淳 競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
勝木淳