「一生幸せでいられるように」下半身が動かない“殺処分寸前の猫”を保護した決意
しのが亡くなり、塞ぎこんでしまったくぅ
――2018年3月、しのちゃんを看取った当時のことを教えてください 【晴】しのは2018年3月7日に亡くなりました。動物病院から連れ帰り、いつも使っていたベッドに寝かせると、猫たちが代わるがわるそばにやって来ました。まるで、別れのあいさつをしているようでした。その中で、くぅだけは怯えたように遠くからしのを見ているだけで、どうしても近づけないようでした。でも、翌朝そっとしのに近づき、じっと顔を見つめた後、少しの間そばに寄り添いました。それが、くぅとしのの別れのあいさつになりました。 ――その後のくぅちゃんの様子は...? 【晴】他の猫たちを遊びに誘ったり甘えたり、食事は1番に駆けつけたりと活発なくぅが、誰もいない場所でひとり静かに寝ていることが多くなりました。私にも甘えることをしなくなり、声をかけても撫でても反応はあまりなく、体を丸めて1日を寝て過ごしていました。 実はしのが亡くなる3ヶ月ほど前から、ひどい便秘と難治性口内炎を併発し、腎臓の数値も悪化し始めました。敏感なくぅは、匂いなどから大好きなしのの命の終わりを予感して、それが強いストレスとなって体調を崩したのだと思います。しのが亡くなった後も、ひとつの症状が治ったら次の病気を発症する...を繰り返し、通院と投薬が欠かせませんでした。
寂しそうなくぅに、真っ先に寄り添ったらい
――ご著書では、塞ぎ込むくぅちゃんに対して、らいちゃんが寄り添ってケアをしていたとありますね。その時のらいちゃんや、他の猫たちはどんな様子でしたか? 【晴】しのがいない寂しさと体調不良で、いつも悲しそうな瞳でひとり過ごすようになったくぅを、猫たちはどうしたらいいのかわからず戸惑ったように遠巻きにしていました。 しかし、らいはそーっとくぅに近づいて後ろにさりげなく控えたり、くぅの顔や頭を優しく毛づくろいして慰めてあげていました。 そんならいのやさしさが通じたようで、少しずつ以前のようにらいの側でくつろぐくぅの姿が見られるようになっていきました。 ――らいちゃんが率先して慰めてくれたんですね。 【晴】はい。それからは、くぅのお世話と見守りがらいの日課になりました。くぅが甘えてらいのベッドに入っていくと、場所を半分譲ってくぅが満足するまでせっせと毛づくろいし、その後くぅが寝るまで見つめながら添い寝をしたり、くぅがポツンとひとりでいると、心配そうに近づいて体調確認の匂いチェックをしたり。 そこに他の猫たちも加わって、くぅのまわりは賑やかになりました。 やさしい日々の中で、少しずつ悲しみが癒えていくと同時に、暗かった瞳に光が宿るようになりました。くぅはまたみんなと一緒に過ごすようになり、いつものまったりのんびりした日常が我が家に戻ってきました。