米長期金利が高止まりでもなぜ株価が上昇基調なのか?
日銀の指値オペを受け投機筋が円売り仕掛ける?
そうした中、日本では円安進行が話題です。ドル円相場は28日に急激に円安が進み、一時125円を付けました。そのきっかけは日銀が指値オペ(10年金利を0.25%以下の水準に抑え込む措置)を実行したことです。指値オペの通知を受け、円売りのきっかけを探していた投機筋が大規模な円売りを仕掛けたとものと推察されます。日本の長期金利が「ゼロ%程度」で据え置かれる公算が大きくなる中、為替市場で米長期金利の上昇、すなわち日米金利差の拡大を見込んだドル買い・円売りが活発化しているのは火を見るよりも明らかでしょう。
為替市場で日米金利差が「飽きられる」可能性
もっとも、為替は日米金利差だけで決まらないことを改めて認識する必要があるでしょう。最もポピュラーな為替の説明である日米金利差は比較的短期(概ね1年以内)の変動を説明するのに適していますが、2~3年といった比較的長期になるとその説明力が失われることに留意が必要です。グラフをみると、短期間に日米(10年債)金利差が大幅に変動した際、ドル円が敏感に反応した局面もありましたが、たとえば2018年後半~20年前半にかけては日米金利差が大幅に縮小したにもかかわらず、ドル円は概ね横ばいで推移し、2018年と19年は年間の値幅が変動相場制移行後の最小を記録しました。 このように日米金利差は、為替市場で注目されない局面もあります。最近のように日米金利差が急速に拡大する局面でドル円が動意付くことは過去にもありましたが、それが長期の円安トレンドに繋がるかは疑問です。今後、米インフレ圧力の緩和を示す材料が増加するなどしてFRBの利上げ観測が安定すれば、為替市場で日米金利差が「飽きられる」可能性があるでしょう。
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