高まるインフレ圧力 今後の米利上げペースは加速化する?
米連邦準備制度理事会(FRB)は連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%ポイント引き上げることを決めました。ゼロ金利から転換した後、インフレ圧力が高まり、ウクライナ危機という新たなリスク要因も浮上する中、今後の利上げはどう進められていくのか。 第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【グラフ】進む円高、ドル円相場の行方は? 3つのポイントから読み解く
「短期的な上昇圧力高まる」声明文ににじむインフレ警戒
3月FOMCでは大方の予想どおり0.25%の利上げが決定され、米国の政策金利にあたるFF金利の誘導目標の上限値は0.5%とされました。利上げは2018年12月以来で初めてです。利上げは、パンデミックによる不況克服にある程度の目途がつく中、高インフレを終息させる狙いです。なお、この決定に対しセントルイス連銀・ブラード総裁は0.50%の利上げが妥当であるとして反対票を投じました。インフレを早期に終息させるためには0.25%の利上げで済まないとの考えがあるのでしょう。 発表された声明文には「連続利上げが正当化される(ongoing increases in the target range will be appropriate)」との記載があり、追加の利上げが強く示唆されました。またパウエル議長の記者会見では「ウクライナ侵攻が起こる前は、インフレは1~3月にはピークを迎え、今年後半には下がり始めるとみていた。いまは原油価格など短期的な上昇圧力が高まっている」としてインフレ警戒が強められました。その上で「かなりの数のFOMC参加者が今年7回以上の利上げを見込んでいる」と発言し、積極的な利上げ計画の実行を示唆しました。
ウクライナ問題が米経済に与える影響「極めて不透明」
またQTについては声明文で「今後のFOMCで縮小開始を決定する」とされ、記者会見では「今回の会合で、保有資産縮小の計画の設定についての合意に向けて、大きく前進した。計画を最終的に決定し、実行に移すことができる状態になっており、早ければ次の5月の会合で、縮小開始に移れるところまできている」と具体的時期に言及しました。QTとは、バランスシート縮小や量的引き締めとも言い、FRBが市場から買い上げ保有している国債などを削減することです。次回の5月FOMCでは追加の利上げとQT開始(実際の開始は6月?)が同時決定される可能性が高まったと言えるでしょう。なお、ウクライナ・ロシア問題については米経済に与える影響は「極めて不透明だ」と言及するに留めています。