米長期金利が高止まりでもなぜ株価が上昇基調なのか?
米債券市場では10年債利回りが一時2.5%を上抜けるなど、高水準となっています。株価や為替の動きについて、 第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。 【グラフ】目立つ日本株の弱さ 鍵を握るのは…データから見る
長期金利が上がっても株価は下落していない
米10年金利が2.5%に接近するなど長期金利は水準を切り上げています。一般論に従えば、長期金利の上昇は、株式の割引率上昇を通じて現在価値(理論株価)を低下させることから、株価下落要因となります。実際、1月~3月中旬までは米長期金利の上昇懸念が株価下落を招く構図でした。もっとも、直近は長期金利が高止まりする中で株価は反発基調をたどっており、必ずしも「金利上昇・株価下落」の構図になっていません。このように金利に軸足を置いて株価を語ることが難しくなっていることを認識しておく必要がありそうです。
おカネの「置き場」として米国株が選ばれる?
ではなぜ、株価は上昇基調にあるのでしょうか。その要因の一つに、米国のマネーストック(家計や企業が保有するおカネの総量)が膨張した状態のままにあることが挙げられます。マネーストックは、パンデミック発生前を起点にすると4割強増加しています。FRB(米連邦準備制度理事会)は3月に政策金利を引き上げ、金融引き締めに転じましたが、いわゆる「じゃぶじゃぶ」の度合いは変化していません。そうした下でおカネの「置き場」として米国株が選好されているようにみえます。 一方で、通常は逃避先の最上位に位置づけられる米国債は、日増しに高まる利上げ観測にさらされており、さながらリスク性資産のような扱いになっています。短期間に金融政策のコンセンサスが激変する環境下、米国債は安全資産としての性格を失いつつあるように思えます。このように逃避先の選択肢に乏しい状況下、豊富な自社株買いを後ろ盾に、安定したEPS成長率が期待できる株式(特に大型株)が魅力的に映るのはある意味自然かもしれません。実際、米国株(S&P500)の自社株買いは過去最高水準にあります。