イーロン・マスクの「息子の名前」もし一発で読めたらスゴイ
ダンラップの経営手法は、次々に従業員を解雇して、不必要(だと無理やり判断させるのですが)な工場を閉鎖し、ダウンサイジングしてコストを圧縮することで、結果的に利益が積み上がっているように見せる、というものでした。 あまりにも誰かれ構わず解雇していくことから、電動のこぎりのように首を切るという意味で「チェンソー・アル」というあだ名がつけられたほどです。 しかも、ダンラップ自身が部下のクビを直接的に宣告するわけではありません。自分ではほとんど手を下さず、部下を使って解雇の宣告をしていくのです。可能な限り自分の手は汚さず、部下を悪者にしていく点も彼の特徴です。 ダンラップのサンビーム社の様子は、アメリカのジャーナリスト、ジョン・A・バーンによる『悪徳経営者――首切りと企業解体で巨万の富を手にした男』(日経BP社、2000年)に詳しく描かれています。 たとえば、ダンラップは自分自身のイメージをよくすることを優先し、ゴタゴタして問題の多い私生活についてはほとんど公にしていませんでした。また、過去の実績や経験、経歴を捏造したり誇張したりして吹聴する場面も多かったようです。そして支配欲が強く、短気で、いったん怒りに火がつくと手がつけられなくなることを、一緒に働く誰もが知っていました。
● 平凡な部下は恐怖でコントロールし 優秀な者には巨額のアメを提示 このような上司の下で働く部下たちは、どのような思いだったのでしょうか。このことも本の中に描かれています。 ダンラップの前では部下たちは誰もが膝が震え、胃が痙攣したそうです。部下たちはいつかダンラップの逆鱗に触れるのではないかと怯え、重圧に耐えなければいけません。まるで、どこかに地雷が埋まっていて、いつ踏んでしまうかがわからないような状態です。 部下たちは、「重圧を感じる」という生やさしいものではなく、「残忍」といってもよいくらいだと報告しています。 またあるサンビームの幹部は、「きつい人間と悪意のあるダーティな人間は違う」と述べています。ダンラップは、部下に夜中まで仕事について心配をさせるようなきつい人間ではなく、相手を恐怖で縛り付けるようなことをする悪意のある人間だというのです。相手を脅し続け、暴力的で、骨の髄までしゃぶり尽くそうとする人物だということです。