「ポストSDGs」の方向性: 外務省の責任者に聞く
■ポストSDGsの検討のタイムライン
これらを踏まえ、安藤氏は、ポストSDGsに向けた検討のタイムラインを説明した(説明スライドは図のとおり)。加えて、2025年の大阪・関西万博もSDGsをテーマにしているので重要である。 この中で、未来サミットで採択された「未来のための約束(Pact for the Future))でのポストSDGsに関連する次の記述が重要だ。2027年には議論が始まるので、今から準備し玉込めする必要がある。 ポストSDGsについて「2030年まで及びその後に持続可能な開発をいかに推進するかについて、2027年のハイレベル政治フォーラムで検討」と間接的に言及(行動12)
■ポストSDGsにおける日本企業の役割
今後の企業の役割について、安藤氏は、SDGs実施指針の中で、ビジネスでは、企業が経営戦略の中にSDGsを据え、個々の事業戦略に落とし込むことで、持続的な企業成長を図っていくこと、様々なステークホルダーと連携し多様な価値を協創することで、SDGs達成に向けた機運を国内外で醸成することが求められると記載されていると指摘した。 筆者からは、最近企業のSDGs実装が進む中で、17目標・169ターゲットの既存枠組みを活用する、いわば「規定演技」を超えた「自由演技」にも取り組む動きが増えてきていると指摘した。具体例として、世界的な自動車企業が掲げる「ワクワク」「ドキドキ」「感動」といった価値や、日用品企業が提供する「きれい」という価値、フードサービス企業が展開する「ほのぼのとした温かさ」「すべては未来の子どもたちのために」などが挙げられる。これらはSDGsの枠組みを超え、より高次元のウェルビーイングを具体化する取り組みであると述べた。 これを受けて安藤氏は、今後ともSDGsの達成に向けてビジネスの力による創造性とイノベーションが不可欠であると強調した。ビジネスには常にチャンスとリスクの両面が存在するが、イノベーションを通じて改革を牽引してほしい。また、企業は内外で雇用機会を生み出す。企業内部の変革やステークホルダーに対する発信力の強化や異文化への理解が欠かせない。そして途上国とも対話して課題を洗い出し自社の強みを生かして世界に向けて日本の「顔」として発信してほしいとの期待が寄せられた。 コロナ禍の経験や深刻化する気候変動といった地球規模の課題に当面している今、影響は身近に実感され対応は待ったなしの状況である。これらに対して、ビジネスや行政や関係者の連携が必須だ。現場で活動されるビジネスのリーダーシップが重要であり、また、リスクを恐れず挑戦する姿勢が鍵となる。行政としては、引き続き連携をとってまいりたい、と締めくくった。 筆者も外務省に出向していたことがあるが、外交全般や在外公館はグローバル化時代に日本のビジネスにとってますます重要である。安藤氏のような幅広い知見のある方がSDGsを推進しているのは心強いと感じた。 今後、我々は、上記のタイムラインも頭において、新たな価値を創出する企業の動きが、ポストSDGsにおける重要な柱につながるよう今後とも最新の動きを分析していきたい。