「ポストSDGs」の方向性: 外務省の責任者に聞く
■日本の検討状況
安藤氏は、これらの海外での動きも把握の上、日本としても分析を深めていきたいとしている。 日本では、4月22日に上川陽子外務大臣(当時)のもとで「国際社会の持続可能性に関する有識者懇談会」を立ち上げ、2030年以降の持続可能な社会の在り方について議論し、「中間とりまとめ」(令和6年9月)が発信された。この中間とりまとめでは、国際社会の持続可能性を確保し、日本の成長と利益を両立させるための課題と方向性を示唆している。日本は資源の海外依存や少子高齢化といった問題に直面しており、GXやDXによる経済・社会構造の変革が必要である。日本は「人間中心の国際協力」を推進し、2030年以降も視野に入れたグローバルなリーダーシップの発揮が求められているとした。 安藤氏は、この検討成果も継承しつつ検討を進めるうえで、まずは、我が国のSDGs実施指針の改定(2023年12月改定)の内容をよく理解してほしいと述べた。ポイントは以下のとおりだ。 人口減少や少子高齢化が進む中、国内的には、SDGsの理念は我が国が持続可能な発展と繁栄を実現していく上で確固たる原動力であり、各レベルで次の点が重要である。 国家レベル: SDGsと「新しい資本主義」との連携。 地方レベル: SDGsは地方創生の旗印。地方での浸透は日本の大きな特徴。 ビジネス: 事業を通じてSDGs実現との方向性はますます明確化。 市民社会を含む民間: 広範なステークホルダーの間で取組の広がり。 そして実施にあたっての指針は次の通り多面的である。 ⦁ 持続的な経済・社会システムの構築 ⦁ 「誰一人取り残さない」包摂社会の実現 ⦁ 地球規模課題への取組強化 ⦁ 国際社会との連携・協働 ⦁ 平和の持続と持続可能な開発の一体的推進 これに即して、2030年以降も見据えた国際的な議論も主導すべく、自発的国家レビューを進めている。 自発的国家レビュー(VNR:Voluntary National Review)とは、各国がSDGsの進捗状況に関する自主的報告を行う定期的レビュー。国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)で発表される。日本は2017年に第1回発表(岸田外務大臣)、2021年に第2回発表(茂木外務大臣)を実施し、次は2025年に第3回発表を行う予定である。