「ポストSDGs」の方向性: 外務省の責任者に聞く
記事のポイント①ポストSDGsの検討が世界で始まり2027年が重要な年と予想される②SDGsの国内レビューが進められており2025年に発表される③ポストSDGsにおいても企業の創造性とイノベーションの役割が重要である
これまで、ポストSDGs検討の一環として、政府でSDGsの取りまとめを担当している外務省国際協力局地球規模課題総括課課長の安藤重実氏による講演と筆者とのトークセッションを行う機会を得た(外務省にも後援をいただいている「SDGsユニバーシティ」12月19日実施)。安藤氏は1999年外務省入省、在インドネシア日本国大使館参事官、在アメリカ合衆国日本国大使館参事官、総合外交政策局国連企画調整課長、同局国連政策課長を経て、2024年10月から現職についた。これをもとに、ポスト2030年について考察を深める。(千葉商科大学客員教授/ESG/SDGsコンサルタント=笹谷秀光)
■SDGsの現状と課題
まず安藤氏はSDGsの現況について次の通り整理していた。 SDGs採択からすでに8年が経過する中で、その達成には依然として多くの課題が残されており、また規定された目標だけでは急速に変化する社会問題に対応しきれない面も浮き彫りになっている。国連による2024年の進捗報告では、各目標の達成が依然として難しいことが明らかにされた。 SDGsの17の目標と169のターゲットの達成には、政府や自治体だけでなく、企業の関与が不可欠であり、企業は本業を通じて社会的価値と経済的価値を同時に追求する新たな価値創造の担い手としての役割を期待されている。 こうした背景から、2030年以降の「ポストSDGs」への関心が高まっている。途上国はまずはその達成に全力を尽くすべきだとしているが、各国や関係者の間では既存の目標を補完しつつ、新たな持続可能な開発の枠組みを模索する動きが活発化していることも事実だ。
■「国連未来サミット」
SDGsは2015年9月に採択されて以降、毎年進捗状況が評価され、4年ごとに首脳級で進捗状況が評価されてきた。次回のSDGサミットは2027年であり、2030年まで残すところあと3年というタイムラインになる。このような中で2024年9月に国連で開催された「国連未来サミット」が注目される。このサミットでは「未来のための約束(Pact for the Future))が採択された。 安藤氏は次のとおりレビューした。現在と将来世代のニーズと利益を守るため、56の行動をとることを表明した政治文書である。全文と5つの章(①「持続可能な開発と開発資金」、②「国際の平和と安全」、③「科学技術・イノベーション及びデジタル協力」、④「若者(ユース)及び未来世代」、⑤「グローバル・ガバナンスの変革」)で構成されている。 これに加え、筆者はこのサミットの前に発表された、2030年以降に向けた長期的な枠組みとして、ヨハン・ロックストロームやジェフリー・サックスらによる「SDGsを2050年まで延長する提言」(2024年6月にNature誌に掲載)にも注目している。2030年と2040年に中間目標を設定し、SDGsの枠組みを長期的に維持し、2050年までに気候変動や生物多様性の損失といった地球規模の課題に対応するためのロードマップが示された。企業の役割も強調されていると述べた。