アニメ映画『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』出演・津田健次郎さん「ウルフの未成熟さが面白い」
未熟さは、みんなが持つ弱さ
――父フレカを殺され、復讐を誓い、ローハンに攻撃をしかける中心人物ウルフ役のお話を聞いた時、どう思いましたか? 実写版は完結しているので、こういった形で本作に参加できると思っておらず、驚きとともに非常に光栄でした。ウルフという非常にクセの強い人物をお任せいただいたので、とてもやりがいがありました。 ――脚本からどのようにウルフという人物を膨らませたのでしょうか。 一見すると、クールでワイルドで、圧倒的に強そうに見えるのですが、その実、メンタル的には弱いところもあって、そこが非常に人間臭いと言いますか、幼いんですよね。そういう未成熟な部分が、ウルフのポイントになるのかなと思いました。簡単に言えば、駄々っ子のようなところがあって、心の狭いところがあるんです。なので、神山(健治)監督は「ウルフは嫌われるかもね」なんておっしゃっていましたけど、僕は割とおもしろがってもらえるんじゃないかなという気がしています。 人間的に小さい部分があるけれど、それは僕も含めて、もしかしたらこの作品を見てくださる皆さんも持っている部分なのかもしれないなと思うんです。あまり立派な人だと崇めるだけで終わってしまうけど、自分たちが生きている地平にいそうな欠落感を持ったキャラクターで、おもしろいなと思いました。 ――ウルフを演じるにあたって、どんなことを心がけてアフレコに臨みましたか。 僕は最初、ウルフのキャラクター像を、もう少し厳つく、ちょっとドスが効いているようなキャラクターを作っていたんです。最終的に大軍勢を率いてトップに立つような男なので、腹の据わった感じや、ワイルドさを強めに出した方がいいかなと考えていたのですが、現場で監督から「もう少し、ある種の若さみたいなものが欲しい」と言われて「なるほどな」と思いました。もちろん脚本を読んで、人としての未成熟な部分や弱い部分が前面に出てくるところはあるなと思っていたのですが、やはりそこがウルフの中心にあるのだなと思いました。 あとは「こいつは結構お坊ちゃんだな。意外と大事に育てられているぞ」ということが、後からじわじわと分かってきましたね。特にヘラに結婚を申し込むあたりや、きっとこの人は父親にそそのかされているところもあるんだな、といったことが徐々に分かっていく感覚がありました。 ――「怒り」にも、悲しみや憎しみ、苦しみを含んだものなど様々あると改めて感じました。ウルフの中でじわじわと芽生える感情の機微をどのようにとらえていましたか。 その時々の状況と、相手との関係性で感情が変わってくるなと思っていました。ウルフは割と繊細な男なので、幼馴染でもあり淡い恋心を抱いていたヘラにみんなの前で結婚を断られて、悔しさや悲しさ、恥ずかしさといった様々な感情がバーッと出てしまった。それが1周した結果、行動が裏目に出てしまい、誰かを傷つけてしまう。そういうひねくれたところがあると思って演じていました。