シャネルの時計・ジュエリー、トップが語る人気の秘密 「いつも驚かせたい」
■時計市場の低迷は長期化 乗り切るカギは…
――2025年以降の時計市場をどう展望していますか。高級時計の好調ぶりは持続するとお考えですか。 「コロナ後の時計ビジネスは右肩上がりで大変な勢いでしたが、今は目に見えて低迷しています。これを言い換えると、異常ともいえる時計市場の膨張が正常化されつつあるということでもあります。現在の低迷は長期にわたって続くでしょう。急速に拡大した時計ブームに消費者は疲れているのではないでしょうか。そのうえ、時間を見るための時計というツールは、もはや現代では必要とされていません。だからこそ、ますますクリエーションやデザインでの勝負が重要になってくるのです」 「実は『プルミエール サウンド』は、コロナのパンデミックがなければ2年前に発表できるはずでした。プロジェクトの中断を余儀なくされ、市場が変調しているこのタイミングでの発売となりましたが、それでも大きな話題を集めました。シャネルらしさ、デザイン力、期待を裏切る意外性が消費者を動かしたのだと信じています。低迷期であってもシャネルの時計は影響を受けないのだ、といえるでしょう。私たちは純粋にクリエーションを追求しているのですから」 ――それができるのはファミリー企業だからですか。 「その通りです。上場していないので株主の顔色をうかがう必要もないし、四半期ごとに業績を発表する必要もありません。上場企業ならば景気後退期にプロジェクトの進行が一定の制約を受けるものですが、私たちにはそうした制約がない。大事なことは、時計産業が長期にわたって危機を迎えたとしたら、マーケティング戦略などではなく、本当に純粋にすばらしいものづくりが決め手になる、ということです」 ――ジュエリーブランドやファッションブランドも軒並み時計の強化に乗り出しています。 「それでもレディースウオッチ分野なら圧倒的に私たちが強いと思います。ガブリエル・シャネルのファッションのDNAから生み出され、我が社の時計の95%を占めるまでにレディースコレクションを充実させているのですから」 「2025年はJ12が25周年を迎えます。もちろん、大きなサプライズのある新作を世に出しますよ」 聞き手はTHE NIKKEI MAGAZINE 編集長 松本和佳 ※この記事は「THE NIKKEI MAGAZINE」の記事を再構成して配信しています。