シャネルの時計・ジュエリー、トップが語る人気の秘密 「いつも驚かせたい」
■トレンドは見ない 「シャネルらしさ」を追求
―――シャネルは創業者、ガブリエル・シャネルのファッション哲学を発展させた時計や宝飾品を開発している点が、他のジュエラーやウオッチメーカーとの最大の相違点だといえます。シャネルが目指す時計・宝飾品作りとはどのようなものですか。 「プルミエールは1987年発売で、香水瓶の栓を模した八角形のケースとシャネルバッグのチェーンのようなレザーを編み込んだストラップが特徴です。一方、J12はシャネルのキーカラーである黒と白のセラミックを用いて、2000年の発売当初からシャネルを代表するアイコンウオッチとして話題になりました。これらの商品が人気を集めたのは、優れたデザインとクリエーションがあるからに尽きます。そして、シャスタンに代表される有能な人材がいるからです」 「目指すのは、他のメゾンがまねできないシャネルらしさをまとい、長きにわたって愛される時計です。日ごろから気をつけているのは、皆さんの期待通りのものを作らないこと、トレンドの傾向を受けないこと、そして常に皆さんを驚かせる新しいものを世に出していくことです」 ――J12のセラミック使用は業界にインパクトを与え、その後さまざまなセラミックの時計が現れました。これも当時のトレンドに左右されず、他に先駆けて影響力のある商品を出していくという理念の表れなのでしょうか。 「はい、シャネルは自分たちでトレンドをつくっていくのが身上です。それも、数年後、20年後、50年後という先を読む。現在、我が社では2027年に発表するハイジュエリーのコレクションの開発が進行しています。時計はさらに新商品開発に時間がかかりますので、2029年のコレクションに着手したところです」
■出資拡大、製品作りへの協力者増やす
――このほどスイスの独立系高級時計ブランドMB&F(マキシミリアン・ブッサー アンド フレンズ)に出資しました。これまでも外装マニュファクチュールやムーブメント会社などの株式を取得しています。狙いは何でしょうか。 「時計ではクリエーションの強化以上に、製品作りに協力してもらうプレーヤーが必要です。以前、スイスのマニュファクチュールを傘下におさめた際には、時計製造が劇的に変わり、今までに7種類の複雑機構を開発しました。今後も継続して有能な人材や会社とコラボレーションしていきます」 「スイスには100年、200年と歴史ある高級老舗ブランドがたくさんあり、それより歴史の浅いシャネルが対抗していくには、高級時計を動かすムーブメントの開発が重要です。今回、出資したMB&Fは複雑機構を得意とする点が魅力でした」 「外部のプレーヤーと組む2つ目の理由は、J12の量産のためです。ムーブメントなどを確実に調達できるようになるからです。そして3つ目の理由は、ノウハウやサヴォアフェール(匠(たくみ)の技)を守っていくこと。時計の開発は時間がかかるもので、有能な時計師の力が必要です。ビジネスを発展させることと同時に、優れたノウハウを持つメーカーの技術を守り、支援することも大事な目標なのです」