「住まいの終活ノート」の使い方解説! "負動産化"防ぐ相続の基礎知識や空き家活用法など、国交省・自治体から発信続々。注目は神奈川県や埼玉・越谷市
神奈川県居住支援協議会の「空き家にしない『わが家』の終活ノート」が使いやすい理由
さて、いろいろなノートを見比べてみたが、それぞれに特徴がある。国土交通省のものは、日本司法書士会連合会や全国空き家対策推進協議会と連携して作成しているため、空き家解消に関する情報や法的な情報が多くなっている。越谷市のものは、分かりやすく平易な表現になっているので取り組みやすく、越谷市のどこに相談したらよいかなどが記載されている。 どういったものが使いやすいかは、使う人によってそれぞれ異なるだろうが、筆者が最も使いやすいと思ったのは、神奈川県居住支援協議会が作成したものだ。なぜ使いやすいと思ったかを少し説明しよう。神奈川県居住支援協議会の事務局である、(公社)かながわ住まいまちづくり協会の入原修一さんに話を聞いた。 まず、居住支援協議会とは、たとえば低所得者や高齢者などの住宅を確保するのが難しい“住宅確保要配慮者”が民間の賃貸住宅に円滑に入居できるように支援する組織だ。住宅セーフティネット法で定められており、地方自治体が不動産の関係団体や居住支援団体と連携して、居住支援協議会を組織することになっている。 放置空き家が問題になってきた2013年度に、神奈川県居住支援協議会では空き家対策にも取り組もうと、協議会内に「空き家問題対策分科会」を設置した。空き家の相談窓口を各市町村に設置していくとともに、空き家の予防にも力を入れていこうと企画されたのが、「空き家にしない『わが家』の終活ノート」だ。 取材に同席した神奈川県住宅計画課・大曲美絵さんによると、「市町村によって違いがあるものの神奈川県の空き家率自体は、全国平均を下回っている。ただし、今後は単身高齢者が増えることから、残された住まいを空き家にしないため、終活ノートを通じた空き家予防の普及啓発により、市町村の空き家施策の一助となることが期待される」という。 筆者が最も使いやすいと思ったノートだと伝えると、入原さんは「日頃から居住支援を行うことで連携している組織であるため、多様な専門性のある人が集まっていたことに加え、互いに顔が見える関係だったのが功を奏した」という。
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