凄いのに目立たない? 岡崎慎司の平凡力
華やかなスポットライトとは無縁の存在。時間があれば歴代のストライカーたちのゴールシーンをよく見る岡崎慎司(マインツ)は、そのたびに自虐的な思いを抱くという。「自分のゴールって、ホントに平凡なんですよね」。苦笑いしながら岡崎が本音を打ち明けてくれたのは、先制とダメ押しの2ゴールをあげ、日本代表における通算得点数を、釜本邦茂、三浦知良の両スーパースターに次ぐ歴代3位の「38」に伸ばした3月5日のニュージーランド代表戦後だった。予想通りに、一夜明けたスポーツ紙のメインは復活を告げるPKを決めた香川真司(マンチェスター・ユナイテッド)か、もしくは先発フル出場で存在感を示した本田圭佑(ACミラン)が占めた。 ザックジャパンのダブルエースと呼ばれる2人に比べれば、確かに岡崎には派手さがない。誠実な人柄がにじみ出てくる言動ゆえに、本田のようなカリスマ性を持ち合わせてもいない。ピッチの上においても、愚直なまでに同じ動きを繰り返す。マインツではワントップとして、ザックジャパンでは2列目の右から、執拗なまでに相手の最終ラインの裏を狙い続ける。たとえ無駄走りに終わってもかまわない。「恐怖を感じる前に飛び込む。ちょっとでも躊躇したほうが危ない」と決死の覚悟を決めて対峙してくる身長174cmの岡崎を、屈強で大柄なディフェンダーたちが逆に畏怖する構図は痛快でもある。 ゴール前のワンポイントで体の一部をボールにヒットさせるか、あるいは味方のスルーパスに抜け出して体勢を崩してでもボールを流し込むか。ゴールパターンが2つに限られていると言っても、それらを徹底して磨き上げていけばおのずと最強の武器と化す。岡崎本人の言う「平凡」の積み重ねが今シーズンの14ゴールであり、ボルシア・ドルトムント時代の香川が2011‐12年シーズンにマークした13ゴールを抜く、ヨーロッパの主要1部リーグにおける日本人のシーズン最多得点記録の更新につながった。