凄いのに目立たない? 岡崎慎司の平凡力
同じ1986年生まれの本田や長友佑都(インテル)の背中を追うように、南アフリカ大会から約8か月後にシュツットガルトへ移籍。昨夏のコンフェデレーションズカップでマークした2ゴールが評価され、日本円にして約2億5000万円の移籍金で直後の6月にマインツへ移った。シュツットガルトでは中途半端な起用法が多く、2012‐13年シーズンはわずか1ゴールにとどまった。しかし、新天地のマインツでトーマス・トゥヘル監督からワントップを託されたことでモチベーションが上がり、積み重ねてきた努力が花開く相乗効果を生み出したのだろう。 今シーズンの岡崎の軌跡に対して、前出の水沼氏も「素晴らしいという言葉以外に見つからない」とこう続ける。「シュツットガルトよりもちょっとレベルを上げたチームに移籍した今シーズンだが、それでもマインツはブンデスリーガのトップグループに入るようなチームではない。そこでマークした14ゴールは、チームに求められた仕事を実践してきた証であり、その意味で岡崎の貢献度は計り知れないくらい大きい」。 ブンデスリーガ一部での歴史が浅いマインツに所属しているゆえに、ヨーロッパを代表するビッグクラブでプレーする本田や香川ほどの眩いスポットライトが当たらないのかもしれない。しかし、岡崎の献身的かつ愚直なプレーにけん引されたチームは、最終戦を残して7位につけている。2シーズン連続で13位に甘んじたことを考えれば、大健闘と言っていい。ホームにハンブルガーSVを迎える10日の次節に勝利すれば、来シーズンのヨーロッパリーグ予選への出場権を獲得できる。 ハンブルガーSV戦で岡崎が1ゴールをあげれば、ドイツ代表FWアンドレ・シュールレ(現チェルシー)が持つ年間ゴール数のクラブ記録に並ぶ。それだけではなく、ヨーロッパの主要1部リーグにおける通算ゴール数を「25」に伸ばし、中田英寿と高原直泰の元日本代表勢に追いつく。さらにもう1ゴールを加えれば、ケルンとヴェルダー・ブレーメンで9シーズンにわたってプレーした奥寺康彦(現横浜FC会長)と並ぶ、ブンデスリーガにおける日本最多得点者に名前を連ねる。