凄いのに目立たない? 岡崎慎司の平凡力
日本サッカーの歴史に名前を刻む存在となっても、特に日本のメディアにおいてはスポーツ紙の1面やテレビのトップニュースを飾ることはまずない。元日本代表MFで、現在は解説者を務める水沼貴史氏は「それは岡崎だからじゃないのかな」と苦笑まじりにこう続ける。「そういうポジションが合っているというか、岡崎の中でも逆に居心地がいいんじゃないかと思う」。 下手クソ。岡崎に自己評価を聞けば、常にこの言葉に帰結する。下手クソだから、もっと努力しないといけない。下手クソだから、試合に出ればどんな形でもチームに貢献しないといけない。ストライカーとしての矜持は、いつ何時でも忘れない。その一方で労を厭うことなく、守備でも献身的に走り回る理由を、岡崎はこう説明してくれたことがある。「それ(矜持)がなくなったら、自分は日本代表にはいない。でも、自分の場合はゴールさえすれば他は何でもいい、という選手でもない。チームを勝たせる何ができるのかを常に考え、それらを実践した上で最終的にゴールという結果を出せればベストだと思っていままでプレーしてきました」 ときとして地味に映りかねない、フォア・ザ・チームに徹する岡崎のポリシーを水沼氏は賞賛する。「ストライカーは常に強引さが必要、ときにはエゴイストになったほうがいいとよく言われるけど、それだけでは絶対に上手くいかない。オレが、オレがとガツガツしていたら、チームというものは回らなくなってしまう。そのチームのやり方に合わせて、チームプレーに徹しながら、最終的にチャンスを得られるポジションにいて逃さずに決める選手がゴールゲッターと呼ばれる。そういう選手の前には、不思議とこぼれ球が転がってもくる。今シーズンの岡崎はまさにそういう存在であり続けた」。 初めてW杯に臨んだ4年前の南アフリカ大会では、開幕直前に当時の岡田武史監督からワントップ失格の烙印を押され、サブへの降格を味わわされた。FWが本職ではない本田が代役を務め、日本代表をベスト16に導く原動力になった軌跡をベンチで見ながら、岡崎はある「決意」を固めている。「先発で出られるのは個の力で何とかできる選手。僕にはそうした能力がない。いい選手がどんどん出てくるし、いまのままでは次のW杯に出られる保証もない。自分も世界を見据えてやらなきゃいけない。無謀に聞こえるかもしれないけど、僕にも世界ナンバーワンのストライカーになるという野望があるので」。