「障害児」に“クビ宣告” 9歳自閉症児の母が直面した厳しい現実 施設が“態度一変”
「障害児の居場所」から退所を迫られた
あるとき、私は、息子が小学校入学時から3年以上通っていた放課後等デイサービスから、「来年度以降、息子さんを預かるのは難しい」と伝えられました。 かつては「息子さんを末永く見ていきたいと思っています」と言ってくださった事業所からの、突然のクビ宣告のようなものでした。 息子は自傷や他害行為などはなく、私の認識では特に大きな問題を起こしてはいませんでしたが、やはり重度の知的障害児なので、問題行動とされる行為はいろいろあります。 そのため、3年生の後半くらいから、何か調子が良くなかったり、問題行動が激しくなったりしたときに、「このままでは難しいかもしれない」ということは折に触れて言われていたのです。 ただ、息子が比較的調子が良く、落ち着いて毎日を過ごせていたときに伝えられたため、私にとっては青天のへきれきのようなものでした。 息子のほかにも、他のお子さんが小学校高学年くらいになって、長年通っていた放課後等デイサービスから利用を断られたり、退所せざるを得ない状況に追い込まれたりしたというケースはよく聞きます。 子どもによって理由や状況はさまざまですが、本人や周囲にとって危ない状況になってしまったり、そのような事態を防ぐことができない人員不足の状況があったりなど、難しい問題があるようです。
成長に伴い扱いが難しくなっていく現実
障害がある子どもを持つ親としては、長年通った放課後等デイサービスを突然利用できなくなるというのは、死活問題です。 仕事をしていたらなおのこと、重い障害がある子を一般的な学童に通わせるのは難しいですから、仕事をやめなければならないこともあります。事実、私の周囲でも、放課後等デイサービスを利用することができなくなったため、仕事をやめざるを得なかった人もいました。 しかし、必ずしも放課後等デイサービス側が理不尽に対応を変えているというわけではなく、子どもにも、学齢期特有の難しい問題が生じやすいともいえます。 小学校高学年にさしかかると、障害がある子も他の子と同様に思春期を迎えます。そうすると、どうしても情緒が不安定になりやすく、問題行動が激しくなりやすいのです。 また、一般的に子育ては、子どもが育っていくほど楽になるといわれていますが、障害児育児は違います。成長とともに、いろいろなことの認知が進み、かえって特性が強くなってしまうこともよくあるのです。 さらには、学齢期という体が大きく成長する時期だからこそ、体格が大きくなって制御が難しくなるという問題もあります。 小学1年生のときは、まだ小さくて力も弱く、支援者が簡単に抱きかかえたり制御できたりした子どもも、小学4年生、小学6年生と成長していくのに伴い、大人に近い体格になっていきます。かつては壁をたたいても何ともなかった子が、成長とともに壁に穴を開けるようになってしまうかもしれません。また、物を投げる力が強くなって、周囲に危険を及ぼすかもしれません。 放課後等デイサービスの事業所側としても、「以前は大丈夫だったけど、今は…」ということになってしまうのでしょう。