なぜ大谷翔平の二刀流は約1ヶ月遅れのキャンプインの影響を受けないのか…“秘密基地”「ドライブライン」での自主トレ成果
例えばその日、投手が球速の目標を93マイル(約149.7キロ)に定め、投げているうちに92.2マイル(約148.4キロ)、92.5マイル(約148.8キロ)と徐々に上がっていくと、横から見ているトレーナーや一緒に練習をしている他の選手が、「よし! いける」「もう少しだ!」「思い切って腕を振れ!」と、次々とケージの外から掛け声をかける。実際に93マイル(約149.7キロ)に達すると、やんやの大喝采となる。 それだけ真剣に投げるということは、打者にもメリットがある。キャンプに入ればもちろん、オープン戦前にライブBPが行われるが、味方に投げることから、投手も遠慮し、打者もほとんど振らない形だけのもの。それとはまるでレベルが異なり、よって大谷も昨年、キャンプ序盤の打撃の状態の良さを聞かれて、「単純に、生きた球を見たほうがレベルアップにも繋がる」と話し、ドライブラインでこなしたライブBPの質の高さをほのめかしたのだった。 打者としての仕上がりの良さは、数値にも現れている。14日、大谷はバットのグリップエンドに装着して、バットスピードやバットのスイング軌道などを計測するブラストモーションというデバイスを使って打撃練習を行っていた。このときのバットスピード(コンタクトの瞬間の速度)は常に83マイル(約133.6キロ)前後をマークした。 この数字が何を意味するのか? 「CAP Hitting」というウェブサイトには、2018年のホームランダービーに出場したブライス・ハーパー(当時ナショナルズ、現フィリーズ)、アレックス・ブレグマン(アストロズ)、カイル・シュワーバー(当時カブス、現フィリーズ)の3人が記録したバットスピードの平均が掲載されている。 ハーパー 79.333マイル(約127.7キロ) ブレグマン 72.692マイル(約117キロ) シュワーバー 79.444マイル(約127.8キロ) この数値は、打球初速 = (バットスピード x 1.2) + (球速 x 0.2)※ という式から求められる。 (※イリノイ大のアラン・ネイサン名誉教授による以下の論文を参照:・「バットの違いによる研究 2011年4月」・「野球の力学。バットの衝撃 2000年11月」) ホームランダービーでの数値は、打撃投手の球速を60マイル(約96.6キロ)に設定しての数字なので、単純にブラストモーションの数値とは比較できないが、この計算式を利用して、大谷が昨年、ホームランダービーに出場して放った全28本塁打のバットスピードの平均を球速60マイル(約96.6キロ)に設定して計算すると、82.4マイル(約132.6キロ)だった。