なぜメジャー挑戦を決めた鈴木誠也は早くもFA市場で高評価されているのか…4年約79億円の値段が付く理由と懸念材料
広島の鈴木誠也(27)がポスティング制度で大リーグへ挑戦することが発表された。鈴木に関しては、すでに米メディアの間で追いきれないほどの記事がネットに溢れ、様々な分析が加えられていた。では、メジャーの本当の評価はどうなのだろう。 ここ数年、野手では秋山翔吾(レッズ)、筒香嘉智(パイレーツ)が、大リーグに移籍したが、期待された数字をあげられていない。よって、日本人野手に対する評価が下がっているのかと思ったが、やり取りしたスカウトは、「鈴木は、彼らより格上。いいリポートが届いている」と明かした。 「2016年以降、6年連続で打率3割以上を残し、25本塁打以上を放っている。出塁率はここ4シーズン、4割を超え、三振も少ない。なんといってもOPSが1を超えたのが過去6年で4度。残り2回も悪くない」 確かにオフェンスの数字はシーズンによって大きな波もなく、高いレベルで安定。もちろん、同じリーグでプレーした筒香も日本時代の打撃成績は秀逸で、彼が苦労したことをメジャーの各球団がどう捉えるかだが、「鈴木には、スピードと守備力もある点で、筒香とは異なる」と同スカウトは指摘する。 「肩が強く、ライト前ヒットで三塁を狙う一塁走者を二塁で釘付けにできる。走ってくれれば、三塁でアウトにできる」とイチロー(マリナーズ会長付特別補佐)の現役時代のような評価で、「ここ数年、彼に関しては定期的にチームでリポートをまとめているが、全体的なバランスもいいし、ポスティングされるなら、準備はできている」と続けた。
外野手のFA市場に目玉が少ない
「Prospects Live」という主に若手有力選手やドラフト選手の情報を扱うサイトでは、セイバーメトリクスの観点から鈴木を分析。打率だけでなく、wRC+(球場要素などを加味し、打席あたりどれだけ得点を生み出しているか、その傑出度)、OPS+(球場要素などを加味し、平均的打者を100とし、何%高い得点力を有しているか)、wOBA(その選手が打席あたり、どれだけチームの得点に貢献しているか)、wRAA (リーグの平均的な打者と比べ、どれだけ得点を創出しているか)などでも軒並みリーグトップであることを紹介している。 カブスの情報を扱うサイトの「CUBS INSIDER」は、戦力状況からカブスにフィットすると分析し、十分な資金もあると説明。「BLEACHER NATION」もカブスが動くことは、理にかなっていると訴えた。シカゴのもう一つのチーム、ホワイトソックスのニュースを扱う「SOX NATION」も鈴木を補強候補の2番手にランク付け。条件としては4年総額7000万ドル(約79億8000万円)、5年目はチームオプションと具体的な数字も挙げている。この数字はいいところを突いているので、後で触れるが、改めて移籍を俯瞰すると、追い風と向かい風がある。 まず、追い風について。今オフのFA(フリーエージェント)市場は、カルロス・コレア(アストロズ)、コーリー・シーガー(ドジャース)、クリス・ブライアント(ジャイアンツ)、マーカス・セミエン(ブルージェイズ)、フレディ・フリーマン(ブレーブス)ら内野手が豊作。対照的に外野手には突出した選手がいない。 主な外野手のFA選手を挙げるとーー。 ・ カイル・シュワーバー(レッドソックス)※ 相互オプション 破棄見込み ・ マイケル・コンフォート(メッツ) ・ ジョク・ピーダーソン(ブレーブス) ※相互オプション 破棄見込み ・ エディ・ロサリオ(ブレーブス) ・ トミー・ファム(パドレス) ・ ホルヘ・ソレア(ブレーブス) ・ スターリング・マルテ(アスレチックス) ・ アビサイル・ガルシア(ブルワーズ)※ 相互オプション 破棄? 行使? ・ ニック・カステヤノス(レッズ)※ 選手オプション 破棄見込み ・ チャーリー・ブラックモン(ロッキーズ)※ 選手オプション 行使見込み この中でチームがクオリファイングオファー(来季は1840万ドル=約21億円)をすると見られているのが、カステヤノスとコンフォートの2人。彼らと契約する場合、そのチームが持つ最上位のドラフト指名権を譲渡しなければならないため、その犠牲を払ってまで獲得すべき選手かどうかは、正直、意見が分かれる。残りのメンバーと比較すれば、市場の行方を左右する選手がおらず、むしろ鈴木中心に市場が動きそう。であれば、かなり交渉を有利に進められるのではないか。