なぜカブスは5年100億円の大型契約で鈴木誠也を獲得したのか…再建目指す球団ビジョンに合致
ポスティングシステムを利用してメジャー移籍を目指していた元広島の鈴木誠也外野手(27)が15日(日本時間16日)、シカゴ・カブスと契約合意に達した。MLB公式サイトなど複数の米メディアが報じたもので、契約は5年総額8500万ドル(約100億円)でポスティングの譲渡金として1462万5000ドル(約17億円)が広島に支払われることになる。過去の日本人野手のメジャー移籍としては、2007年のオフに中日からカブスへ移籍した福留孝介外野手(44)の4年総額4800万ドル(当時約54億2000万円)を上回り歴代最高額の契約となる。なぜカブスはこれだけの大型条件を用意して鈴木を獲得したのか。
6球団の争奪戦
鈴木には複数の球団が興味を示しパドレス、ドジャース、レッドソックス、ジャイアンツ、マリナーズ、カブスの6球団が具体的なアクションを起こしていた。その中でもパドレスが大本命で、鈴木はサンディエゴのペトコパークを訪れて直接交渉を行い、パドレスに所属するダルビッシュ有の家族とも交流して、一部の日米メディアは日本時間の15日に「5年7000万ドル(約82億円)で基本合意」と報道したが、鈴木自身がSNSで「どれも真実ではない」「ガセネタに注意!」などと否定。その夜にカブスは、チームのオーナー兼会長を務めるトーマス・リケッツ氏までが、異例の直接出馬をして、ジェド・ホイヤー球団社長、デビッド・ロス監督らと共に“逆襲の直接交渉”に挑み、2016年以来の世界一奪回に向けて進めてるチーム再建プランを熱く説き、一気に契約合意にこぎつけた。 なぜカブスは鈴木にこれほどまでの条件を用意し、また鈴木も複数のラブコールの中からカブスのオファーを受け入れたのか。 カブスは、一昨年にホイヤー球団社長が就任すると、「次なる偉大なカブス」へ舵を切る再建プランをスタートした。ダルビッシュ、カイル・シュワバー外野手らのトレードからはじまり、昨年は、クリス・ブライアント外野手、アンソニー・リゾ一内野手、ハビアー・バエズ内野手、クレイグ・キンブレル投手、ジョク・ピダーソン外野手、アンドリュー・チェイフィン投手、ライアン・テペラ投手という2016年のワールドシリーズを制したベテランと高年俸選手を次々と放出した。チームは大胆な世代交代を推し進める過渡期にあり、昨季はナ・リーグの中地区4位と低迷した。 今季を戦う上での戦力不足は顕著で、特に課題である投手陣のローテーションを強化するため、すでにマーカス・ストローマンやウェイド・マイリーを獲得したが、「ナ・リーグ中地区の最下位をピッツバーグ(パイレーツ)と争うと予想される状況で水曜日を迎えていた」(米ヤフースポーツ)という。 それでもホイヤー社長は、キャンプ初日の14日の会見で「我々は今季戦えると信じることのできるチームを作り上げたい。ただ将来に目を向けていることに疑いはない」とも語り、長期ビジョンで考えて、数年先に優勝を狙うチームの主軸になることができ、同時に今季も上位を狙うための即戦力となる若手選手に目を向けており、27歳の鈴木はまさにカブスのチーム戦略にピタリとあてはまる最適の人材だった。