自民党総裁選 所見演説会(全文1)石破氏「成し遂げたいのはグレートリセット」
勇気と真心を持って真実を語る
石破:衆議院の石破茂であります。このたびの総裁選挙に立候補するに当たり、所見の一端を申し述べます。冒頭、今回の台風で被災をされました方、命を亡くされました方、そして東日本大震災をはじめ、今なお苦難の中にあられる方々、復興・復旧に当たっておられる多くの皆さま方、心からお見舞いを申し上げ、敬意を表する次第であります。 私はずっと政治とは何か、自民党とは何か、政治家とは何かを考えてまいりました。もう今から35年も前のことになります。昭和60年夏のことであります。渡辺美智雄先生の政策集団の研修会が箱根でございました。当時、私は27歳であったと思います。自分で車を運転して箱根までまいりました。1時間半にわたる渡辺先生のお話を聞きました。おまえたちはなんのために政治家を志すのか。先生、先生と呼ばれたいのか。ポストが欲しいのか。いい勲章がもらいたいのか。金が欲しいのか。そのようなやつは政治家になってはならない。去れ。よく聞け。政治家の仕事というのはたった1つなのだ。勇気と真心を持って真実を語る。それだけが政治家の仕事なのだ。 私はあまりに感動したので、そのときのテープをいただいて、議員になるまでの1年余り、ずっと車のテープを聞き続けました。真実は自分で見つけなければならない。たとえ耳に痛くても、受けなくても、それを語る勇気を持たなければならない。そして分かってもらえる、分かっていただける真心を持たねばならない。議員になって34年余り、今なおそうあることができない自分を心から恥ずるものでありますが、そうありたいと今もそう思っております。
自由闊達に真実を語る政党でなければ
自由民主党とは何か。われわれは3年3カ月、野にありました。300あった衆議院の議席は119になりました。東日本大震災、政調会長であった私はお願いして、宮城県女川の避難所に一晩泊まりました。多くのお声をいただきました。われわれは陳情するのが仕事じゃない。復興庁のようなものをつくってくれ。多くのお声をいただいたことをよく覚えております。そのときほどわが党が政権にないことの申し訳なさ、心から思ったことでございました。 私たちは新綱領を作りました。自由民主党はかくあるべし。谷垣総裁の下、徹底的な議論を行い、自由民主党かくあるべし、新綱領を作ったのであります。自由民主党は勇気を持って自由闊達に真実を語る政党でなければならない。自由民主党はあらゆる組織と協議する政党でなければならない。自由民主党は国会を公正に運営し、政府を謙虚に機能させる、そういう政党でなければならない。自由民主党の政府は政策を、条件を、あらゆる人に公平にするものでなければならない。新綱領を掲げ、われわれは安倍総裁の下、一致して戦い、政権を奪還し、今日があります。 自由闊達に真実を語る政党、あらゆる組織と協議する政党、政府を謙虚に機能させる政党、そして全ての人に公平な条件を作り、政策を作る。自由民主党は常にそういう政党であるかどうか、胸に問い掛けていきたいと、そのように考えております。 時代認識について申し上げます。100年に一度という言葉がよく使われます。100年前に何があったか。1914年から1918年まで第一次世界大戦でありました。世界で1億人の人が命を落としたといわれるスペイン風邪。1918年から1920年まで世界で大流行いたしました。1929年、大恐慌。1939年から1945年まで第2次世界大戦。それが100年前の出来事であります。われわれは戦争を絶対に起こしてはならない。ウイルスで大勢の人たちが命を落とすような、そのようなことがあってはならない。経済が破壊されるようなことは絶対に防がねばならない。そういう認識でおります。 令和の政治を語るときに平成とはなんであったか、そのことに思いを致さなければなりません。3つのものが終わったか、もしくは大きく変わったのが平成の30年でありました。戦後が終わった。かって田中角栄先生は、あの戦争に行ったやつがこの国の中心にいる間は日本は大丈夫だ。そうでなくなったときが怖い。だからこそよく勉強してもらわねばならない。一兵卒として日中戦争に従軍された田中角栄先生は生前、そう語っておられました。