自民党総裁選 所見演説会(全文1)石破氏「成し遂げたいのはグレートリセット」
個の利益を全体の利益に優先すれば悲劇の道へ
私は猪瀬直樹さんの『日本人はなぜ戦争をしたか 昭和16年夏の敗戦』、それを読むように多くの皆さま方にお願いをいたしております。昭和16年夏、20年ではありません。帝国政府は総力戦研究所を設立し、陸軍、海軍、あらゆる官庁、日本銀行、同盟通信、30代の俊英を集めて、もし戦争をしたらどうなるか徹底的な討議を行いました。全てのデータは開示をされた。国力の差、経済力8倍、鉄鋼生産量は12倍、自動車の生産台数に至っては100倍違う。全てのデータは開示をされました。出た結論。昭和16年の夏。何があってもこの戦争だけはしてはならない。そういう結論が出ましたが、なぜ戦争になったのかということであります。 国民には正確なデータが知らされていなかった。メディアは戦争をあおった。そして権力とメディアが癒着をした。さらには、そういうことをすれば予算が削られる、そう恐れた軍部もあった。反軍演説をした但馬の代議士、斎藤隆夫。衆議院を除名になった。反対した者はわずか7名であった。それぞれが保身に走り、個の利益を全体の利益に優先したとき国は悲劇の道を歩んだ。そのようなことを決して繰り返してはならない。戦後が終わったということを私たちはもう一度心に刻まなければなりません。 民主主義、終わったとは言わないが大きく変質を遂げた。それが平成だったと思う。大勢の人が参加をしなければ民主主義は成り立たない。正しい情報が有権者に与えられなければ民主主義は機能しない。少数意見が尊重されなければ民主主義は機能しない。私たちは民主主義がきちんと機能するように、大勢の人が参加できること、正しい情報が与えられること、少数意見が尊重されること。民主主義を守っていけねばなりません。
新しい資本主義を考えねばならない
資本主義、大きく変質を遂げたと思っております。株価は上がった。有効求人倍率は全ての都道府県で1を超えた。企業は空前の利益を上げた。素晴らしいことであります。しかし他方、格差が拡大をしていはしないだろうか。一部の人だけに利益が及んでいないだろうか。東京一極集中が進み、集中の利益が毀損されてはいないだろうか。新しい資本主義というものを考えていかねばなりません。地方であり、農林水産業であり、女性であり、サービス業であり、その持てる力を最大限に引き出していかねばなりません。 21世紀は端的に申し上げますが、世界の人口が倍になり日本の人口が半分になる。それが21世紀であります。少子化は進み、高齢化は進み、あと20年で介護に掛かるお金は2.4倍、医療に掛かるお金は1.7倍。この経済を維持していかなければ日本の福祉を、幸せを維持していくことはできない。私は企業は株主だけのものではない、経営者だけのものではない、従業員であり、家族であり、地域社会のためである。新しい公益資本主義、これを世界に先駆けて日本は広めていかなければならないと思っております。 利潤だけを目的とするのではない。日本各地でいろんな取り組みが始まっている。循環型、そして里山の資源、それを最大限に生かしたサブシステムとしての里山資本主義。それを日本から確立をしていきたい、そのように考えております。 消費性向の高い所得の低い方々。年収350万。地方で、中小企業で、サービス業で一生懸命働いておられる方々。そういう方々の雇用と所得、これを増やしていかなければなりません。潜在力を最大限に引き出し、GDPを維持し、引き上げ、生きていて良かった、日本に暮らして良かった。そう思っていただける方を増やしていきたい。以上が私の歴史認識であります。 これから総裁選を通じて各論について各候補が議論をいたします。どうぞ皆さん聞いてください。国民の皆さま方、お聞きください。各論について幾つか申し上げます。コロナ対策であります。私は感染者は増加をしているが、重症者は増加をしていないので、医療現場は逼迫していない。そういう認識には立っておりません。医療現場がどれほど困難な中にあるか。コロナに対応する医療関係者、2倍、3倍のストレスを抱えています。収益は悪化をしています。その中で歯を食いしばって命懸けで戦っているのが医療関係者の皆さん方で、それで今日があるのです。医療現場に対する支援を最大限行っていかなければなりません。