【トランプ再選は日本にとってチャンス】といえるもっともな理由…「ウクライナ戦争は終わり、台湾有事は起きない」
いかに有利に収束させるかの消耗戦
前嶋:ロシアの経済成長率は、OECD加盟国で1番だそうですね。 廣瀬:ただ、実際には軍事産業を24時間回して生まれている戦時バブルで、'25年にはバブルが弾けて、一気に問題が噴出するとも言われています。 ロシア財務省が予備資金として積み立てている「国民福祉基金」や金融部門など、経済に暗い展望も出ています。 前嶋:となると、やはりロシアとしても、ここでウクライナと手を打っておくほうがよいという思考が働くのでしょうか。 廣瀬:私はそう思います。2025年問題はかなり深刻で、ロシアは経済だけでなく軍事も消耗している。具体的には、年に2000台の戦車を損耗しています。一方、新規で製造できるのは500台程度。来年に備蓄の戦車が尽きると、今のような消耗戦は続けられないと言われています。 10月にゼレンスキーは「勝利計画」を公表しました。この計画は'25年の終結を見越したものです。ウクライナとロシア双方が、2025年に状況が変わると見ている可能性がある。これを前提に、来年か再来年には終結に向けた何らかの動きがあると予測しています。 前嶋:トランプは一人で全部をまとめられるように見せてはいますが、実際はロシアとウクライナ双方の思惑をくみ取りながらの交渉が進むことになりそうですね。 廣瀬:その可能性は高いと思います。ロシアとウクライナがお互いにゆとりがないなかで、いかに自分たちに有利な条件で終わるかを模索している。 特に戦争を始めたロシアは引き際に苦悩しています。「こんな撤退は無様だ」と国民が感じると、支持率が維持できないかもしれない。それよりもトランプのせいで「仕方なく終結」というムードができれば、プーチンには逃げ道になります。
過度に悲観してはならない
前嶋:ウクライナだけでなく、多くの人が戦争の終結を望んでいる。そのやり方自体には注視する必要があるけれども、戦争を終わらせるという意味では、トランプ・リスクではなく、トランプ・チャンスが到来した、と言えるのかもしれません。 廣瀬:なかなか判断が難しいところではありますが、トランプ外交にはプラス・マイナスの両面で影響がある可能性があります。 たとえば、エネルギー政策でトランプは「化石燃料を掘りまくれ」と言っている。これによってアメリカ産の液化天然ガスが増えれば、現状では原発を稼働できない日本は、アメリカから安価な資源を得られるようになるかもしれない。ヨーロッパも同様で、ロシアからのエネルギー輸入依存をやめることができるかもしれません。 そうなれば、ロシアの経済収入は落ちていき、継戦能力にも明らかに影響が出るはずです。 そうしてアメリカの経済力が強くなると、比例してトランプの国際的な影響力が増す可能性があります。自信を深めたトランプは、各国への要求を強めていくでしょうね。その矛先は、日本にも向かうでしょう。 前嶋:安全保障では、トランプは日本に防衛費の増額を要求してくるでしょう。日本の負担は増えますが、一方で軍事力向上につながるという見方もあります。 リスクが強調されるトランプ関税にも、違った見方がある。関税を上げればアメリカはインフレになり抑止のための利上げが進む。円安になると、理論上日本の輸出業にはプラスです。現実には、より複雑ですが。 鍵はやはり取引です。安倍政権と同様に、石破政権がトランプとの取引で日本の重要性を示し続ければ、日本有利に事を運ぶこともできるかもしれない。トランプ時代の到来を過度に悲観視せず、どう対処すれば国益のためになるのか、視点や思考法を変えるための好機だと考える必要があるでしょう。 「週刊現代」2024年11月30日号より ……・・ 【さらに読む】中国経済「本当の苦境」が日本企業の厳しい決算からわかった…「トランプ時代」到来でさらなるダメージも
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