イーロン・マスクも見放す…?トランプは「2018年と2023年の習近平」と同じ道を辿る
まだドナルド・トランプ政権が始まったわけでもないのに、再び世は、トランプ一色になってきた――。 【画像】「日本のどこがダメなのか?」に対する中国ネット民の驚きの回答 前編【「21世紀のゴジラ」トランプは、中国を踏み潰すなら「中国の失敗」に学べ!】に引き続き、トランプの問題点について解説する。
トランプの「人事の失敗」
次に、人事的失敗について述べたい。トランプ次期大統領は、1期目の反省から、イエスマン&イエスウーマンばかりを周囲に並べようとしている。 1期目には、ジェームス・マティス国防長官、ジョン・ケリー首席補佐官、ハーバート・マクマスター安保担当補佐官、その後任のジョン・ボルトン安保担当補佐官……と、「まっとうな直言居士」が脇を固めていた。彼らは時に、頭の痛いこともトランプ大統領に進言し、幾度も政権のピンチを救った。 ところが、「王様気質」のトランプ次期大統領は今回、阿諛追従(あゆついしょう)に長けた「トランプ一派」で、政権を組み立てようとしている。加えて、連邦議会の上院と下院も共和党が過半数を占めたので、「トリプルレッド」となった。このためアメリカのメディアは、「トランプは(第2次世界大戦を終結に導いた)ルーズベルト大統領以来の強大な権力を手にした」とも報じている。 だが古今東西、「絶頂の時は凋落の始まり」である。中国ウォッチャーの私には、現在のトランプが、「2018年3月と2023年3月の習近平」と、ダブって映る。
絶頂の時を迎えた「2018年3月の習近平」
前述のように、2017年10月の第19回中国共産党大会で権力を固めた習近平総書記は、翌2018年3月の全国人民代表大会(3月5日から20日まで北京の人民大会堂で開かれた年に一度の国会)で、絶頂の時を迎えた。 終身の国家主席を目指すため、憲法79条の国家主席の任期条項を取っ払い、憲法に自分の名前を明記するなど、25ヵ所もの憲法改正を行った。気に入らなかった15もの官庁を消滅させ、自分の意に即した省庁再編を行った。大臣などの幹部人事も、「習近平一派」で固めた。 こうして、満場一致で国家主席に再任され、「わが世の春」で2期目の政権の5年を始動させたのだった。 ところが、全国人民代表大会を終えてわずか3日後の3月23日(中国時間)、トランプ大統領が中国との「貿易戦争」を宣言。中国経済はいきなり、激しいボディブローの雨を浴びせられた。 2020年に入ると、新型コロナウイルスが蔓延。計3年に及んだ「ゼロコロナ政策」によって、中国経済はノックアウト寸前となった。特に、GDPの3割を占めていた不動産業がじり貧となった。 それでも、2022年10月に開かれた第20回中国共産党大会で、習近平総書記は「異例の3期目」を強引に果たした。党幹部人事もほしいがままで、完全な「一強体制」を築いたのだった。 その5年前に一掃した「反習近平グループ」(江沢民派)に続き、「非習近平グループ」(胡錦濤派)をも一掃してしまった。残ったのは、唯々諾々と付き従う「習近平グループ」ばかりである。 翌2023年3月には、国家主席も「異例の3期目」を強引に果たし、3期目の習近平政権を発足させた。もはや水も漏らさぬ「習近平超一強体制」の始まりである。