「せっかくのマイホームが…」家づくりに失敗する人に共通する“原因”とは? 一級建築士が語る「固定観念」の危険性
本来、家の間取りというものは、みなさんが思っていらっしゃる以上に自由なものです。失敗しやすい家づくりの原因の一つが、固定観念に振り回されてしまうこと。今回は、2000軒以上の住宅を手がけてきた一級建築士・内山里江さんの書籍『家は南向きじゃなくていい』より、心から納得できるオーダーメイドの住まいづくりについてご紹介します。 【実際の間取りを見る】30代公務員夫婦の“理想の新居”に潜む落とし穴。なんだか住みにくい原因は「間取り」にあった!?
「実家」を思い浮かべて建てるとだいたい失敗する
失敗しやすい家づくりの原因の一つが、固定観念に振り回されてしまうことです。「子ども部屋は2つは必要」「仏壇を置くために和室が必要」「布団や洗濯物を干すためにバルコニーが必要」などがその一例です。 このような固定観念は「実家」をイメージすることから生まれるようです。幼少期を過ごした家は記憶に強く残るものなのでしょう、みなさんが家を建てるときに思い浮かべるのはほぼ例外なしに「実家」、あるいは「おじいちゃん、おばあちゃんち」です。住んだことのある家を思い浮かべること自体は悪いことではないけれど、それをそのまま、これから建てる新しい家にあてはめるのは危険です。 なぜかというと、時代、生活背景、家電事情、建築技術などが大きく変わっているからです。にもかかわらず実家のイメージにこだわったまま家づくりをしてしまうと、現代の暮らしにそぐわない、不便かつ高コストの家になってしまいます。そのあたりの事情もふまえて提案&設計するのが本来の建築士の仕事です。しかし、ハウスメーカーの合理的な家づくりのプロセスにおいて、建築士は建て主に言われた通りの内容を図面に落とし込まざるをえないのが一般的です。結果、なんだかチグハグな家になってしまいやすいのです。
今住んでいる家との比較にも要注意
固定観念といえば、「今住んでいる家」にも注意が必要です。家を建てる人のほとんどが賃貸アパートやマンション、あるいは自分か結婚相手の実家に住んでいます。それらの家への不満をもとに新しい家への要望を考える人は非常に多く、もちろんそれは悪いことではないのですが、それが足枷となって理想の家づくりを邪魔してしまうことがあります。一例をあげると、賃貸アパートやマンションの間取りやスペースは窮屈なことも多いため、多くの人は「狭い」と不満を持っています。そこで、新しい家ではあらゆるスペースを「広くしたい」とリクエストする人が増えます。 しかし、そもそも戸建ての一軒家は賃貸アパートやマンションと比べるとかなり余裕のある間取りになっています。特別広くしなくても不便はないのです。ところが、それを知らない人はついストレートに「広くして」とリクエストしてしまいます。ハウスメーカーの建築士はそれをそのまま図面に反映するため、無駄なスペースの多い間取りになったり、そのせいで他のスペースが犠牲になったり、大幅に予算をオーバーしたりする羽目になります。「広くして」は要望の一例ですが、「実家による固定観念」と同様に、「今住んでいる家による固定観念」もなかなかに厄介なものなのです。