野心的な排出削減目標を掲げた国は世界の再生可能エネルギー市場で主導的地位を確保できる(サイモン・スティル氏/国連気候変動枠組み条約事務局長)
資金面でも日本のリーダーシップ期待
去る9月にニューヨークでの国連総会で「日本気候リーダーズ・パートナーシップ (JCLP)」(注2)の経済界のリーダーの皆さんと面談する機会があり、たいへん心強く感じました。
その際に皆さんは、クリーンエネルギーに転換し、気候変動に対するレジリエンスを高めるために、日本の全産業分野でのあらゆる側面での取り組みを加速する必要性がある、と強調しました。皆さんが強調していたのは、日本の経済と国民の繁栄と安定を確かなものとするための道筋で、より高い目標の意欲的なNDCを掲げ、これを実効性のある政策で支えていくということでした。
もちろんNDCは「国が決定する貢献」と呼ばれるその名の通り、各国が主体的に決定するものです。クリーンエネルギーへの移行の道筋は日本の英知と判断に委ねられています。
日本がCOP29の開催中にG20の中で真っ先に2年ごとの排出削減実績報告書を提出したことは日本の強いリーダーシップと積極的な姿勢を示すものとして敬意を表します。資金面でも日本の継続的なリーダーシップが必要です。
COP29での合意に基づき、脆弱な途上国向け資金を現在の3000億ドルから年間1.3兆ドルへと拡大するための明確な道筋を来年には示していく必要があります(注3)。
気候変動対策は日本の国益に
途上国向け気候資金の供与は単なる援助という次元を超えた重要な意味を持っています。日本が今日の繁栄を築く基盤となっているグローバルなサプライチェーンを維持し、気候危機を回避するために「2030年までに温室効果ガスの排出量を半減する」という世界が達成すべき目標に不可欠な要素なのです。
気候資金の充実のためにはCOPの枠組みにとどまらず、多国間開発銀行を通じた取り組みでも着実な前進が求められています。日本をはじめとする主要な経済国には主要な出資国としての地位を生かして必要な改革を推進していく役割が期待されています。
最後に申し上げたいのは、日本には気候変動に対する国際協調の取り組みで誇るべき歴史があるということです。世界的な気候変動対策の大きな一歩となった「京都議定書」が日本で採択されたことは象徴的な出来事でした。