野心的な排出削減目標を掲げた国は世界の再生可能エネルギー市場で主導的地位を確保できる(サイモン・スティル氏/国連気候変動枠組み条約事務局長)
G7は特別の責任
先進7カ国(G7)には特別な責任が課せられています。先のG7共同声明では全ての G7諸国が排出削減目標を引き上げ、より意欲的な取り組みを行うことを具体的に約束しました。大変心強い動きです。
またアゼルバイジャンで開催された国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第29回締約国会議(COP29)では、英国のスターマー首相が温室効果ガス排出量を2035 年までに1990年比で81%削減するという高い削減目標を掲げました。これは非常に力強いメッセージでした。 これまでの排出削減の道筋を大きく超えた、意欲的な削減目標を掲げる英国のような国は、世界的なクリーンエネルギー革命の恩恵を最大限享受できます。経済成長の加速や生産性の向上、そして雇用の創出といったさまざまな機会を手にすることができます。
COP29ではG20メンバーであるブラジルも気候変動対策を強化する意向を示しました。これは重要な動きです。パリ協定では、経済が進んだ国が強力な対策を率先して実施することが求められているからです。
またアラブ首長国連邦やスイスなどからも排出削減目標を引き上げるとの意欲的な計画が示されました。スイスは日本と同様に世界有数の基軸通貨を持ち、技術革新でも先導的な役割を果たしています。
COP29ではG7やG20、またこれ以外の国々も対策の強化に向けて明確な姿勢を示しています。なぜなら対策の強化は既に深刻化している気候変動の影響から国民の生活と経済を守るための唯一の方法だからです。
大胆な対策は経済発展の鍵
ここで見落としてはならないのは、大胆な気候変動対策こそがこれからの経済発展の大きな鍵にもなると主要経済国が認識し、対策を加速させていることです。
再生可能エネルギーへの転換はもはやグローバル経済の大きな潮流となっています。私たちの時代の最大の産業構造の転換であり、最大の投資の機会になっています。
より野心的な排出削減目標を掲げた国々は(世界の)再生可能エネルギー市場で主導的な地位を確保できます。その市場規模は今年の段階でも約2兆ドルで、その規模は今後一層の拡大が確実視されます。