箱根駅伝“山の神”に「絶対なりたい、とは思わなかった」東洋大・宮下隼人が逃した“神”にいま思うこと「5区の区間記録はプライドでした」
もしかして山を走れるかもしれない
出身高校は陸上がそれほど強くなかったこともあり、トレイルを走るなど、いろいろな練習をこなしてきた。その蓄積があったのだろう。上りで持ち味を発揮し、合宿最後のトライアルで1番になった。 「たまたま1番になれたのですが、これは自信になりました。それまでインターハイなど高校の実績がないし、タイムも遅いので気持ち的に引いていた部分があったんです。でも、それから気持ちが積極的になりましたし、これはもしかして山を走れるかもしれない、と5区が現実味を帯びてきた感がありました」 柏原が走った5区で自分も勝負したい気持ちが高まってきた。だが、選考シーズンに入った秋、右足の脛の疲労骨折が判明し、箱根の選考に絡めずに終わった。 「怪我して走れないストレスはあったんですけど、不思議と箱根のメンバーに入れなかったストレスはありませんでした。レースの時は現地でタイム計測をしていたのですが、沿道でのすごい応援を見るとやっぱり走りたいと思いましたね」
目の前で抜き去られた同期
宮下は5区と8区のタイム計測に行った。5区では田中龍誠が首位を守って往路優勝を果たした。だが、復路では8区でトップを駆けていた同期の鈴木宗孝が東海大の小松陽平に抜かれて首位転落というシーンを目の当たりにした。 「同期の鈴木が小松さんに抜かれたんですが、それを見た時、1年生で鈴木ひとりに苦しい思いをさせてしまったなと思いましたし、すごく悔しかったんです。2年の箱根では、一緒に走ってこの悔しさを晴らそう。自分が何とかしないといけないと考えるキッカケになりました」
ついに走った5区
第96回箱根駅伝、宮下は5区を任され、14位で襷を受けた。 「スタート前は、相澤(晃)さんがいますし、トップで来るだろう、そうなると浦野(雄平・国学院大)さんに追われる……と思っていたので、どうやったら逃げ切れるか考えていました。でも、実際は順位が下の方(14位)だったので、周囲は気にせず、自分がどれだけやれるかやってみよう、と自分の走りに集中していました」 走り始めると、がっちりした体格を活かして山をガンガン駆け上がり、ガッツのある走りを見せた。それは、宮下が憧れた柏原を彷彿とさせるような走りだった。 「沿道のすごい応援に驚きましたけど、ここが柏原さんが走ったところかと思うと、すごく楽しかったですね」
【関連記事】
- 【つづきを読む/山本唯翔編】箱根駅伝“山の妖精”は「やっぱり“神”になりたかった」城西大・山本唯翔が区間新を2度マークした5区への思い「記録が破られて正直悔しい」
- 【写真】「こ、これはきつそう…」端正な顔をゆがめて必死でゴールする東洋大時代の宮下隼人から、爽やかな特写+今大会の「山の神に迫った男」、“若乃神”こと青学大・若林宏樹を写真で見る
- 【若乃神】「いまは山に妖精や名探偵までいるけど…」箱根駅伝“5区で区間新”青学大・若林宏樹が語った“若乃神”秘話…「最初は何、言ってんだろうと(笑)」
- 【名探偵】「トレンド1位、いただきました!」箱根駅伝5区“例のポーズ”がSNSで話題沸騰…早大の“山問題”を解決「山の名探偵」まさかの名付け親は…?
- 【神候補】「山の神に迫った男たち」宮下隼人&山本唯翔が“史上最大の5区決戦”を大予想! 箱根駅伝の4代目「神」候補は若林宏樹(青学大)かそれとも…?