【解説】マックのリリースはヒントになるか? カスハラモードに陥らない気持ちの切り替え
企業のカスハラ(カスタマーハラスメント)対策発表が相次いでいる。長く日本で社会通念だった「お客様は神様です」。しかし、金を払っている客なら、従業員にどんな言い方をしても良いわけではもちろんない。「客なのに損をした」などと店側を責めて、不当な見返り(商品券や物品など)を求めたりして良いわけもない。客として泣き寝入りすべきでないこともあるが、過剰な要求をするなど、カスハラモードにならないためには、どうすべきなのか? 米国マクドナルドのリリースが示唆することを考える。(日本テレビ解説委員・安藤佐和子) 【図解】カスハラになる前に…“怒りは書いて”捨てる?
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■カスハラを受けた100人に3人以上が「通院、服薬」
客「悪意あるとしか思えないんですけど。私、だまされましたよ。最低な会社ですねっ」。 通信大手のソフトバンクは今、こうした客のクレームの声が、コールセンターの従業員の耳には怒りの度合いが抑えられて聞こえるようにするシステムを開発中だ。 客から暴言を吐かれた従業員は萎縮してしまい、本来の対応ができなくなるケースも多々あると言う。ソフトバンクは、コールセンターの従業員を守るためにシステムを開発していて、社内外の検証を経て問題なければ事業化していく計画だ。
顧客等からの暴行、脅迫、ひどい暴言、不当な要求等の著しい迷惑行為=「カスタマーハラスメント」。 厚生労働省の調査によると、「カスハラで被った損害」について企業に聞いたところ、22.6%が「従業員の休職・離職」と回答した。(調査対象=過去3年間に顧客等からの著しい迷惑行為があったとする企業1880社。「職場のハラスメントに関する実態調査」より) また、カスハラを受けたことのある861人に対する調査では、16.7%の人が「眠れなくなった」と答え、5.7%が「会社を休むことが多くなった」、さらに3.8%が「通院や服薬した」と答えている。深刻だ。
■加速する企業の"カスハラ"対策
こうした中、厚生労働省は「不当・悪質なクレームは、従業員に過度に精神的ストレスを感じさせ(中略)企業に多大な損失を招くことが想定される」などとして企業に対して、従業員を守るための「カスハラ対策」を行うよう促している。 指針となるマニュアルも公表していて、こうしたことも手伝い、企業の「カスタマーハラスメント対策」の動きが加速している。 前出のソフトバンクは今月、「カスタマーハラスメントについての考え」もHPで公表。 ANAホールディングスも2013年から社内で報告を求めてきた288件のトラブル事例や対応を洗い出し、社内向けのマニュアルを完成させた。顧客からの暴言、誹謗中傷、差別発言、また脅威を感じる言動や複数回のクレームなど、何がカスハラとみなされるのかについてまとめ、従業員が参照できるようにした。 ANAは、どのような場面でカスハラが起きるのかを社員が認識することで、「カスハラが発生しない環境」の整備を目指すとしている。