子どもが模型触って姿イメージ 視覚支援学校で「さわれる動物園」
福島県立視覚支援学校(福島市森合町)の一室に4日、動物の模型28体を並べて視覚障害の子どもたちが触って観察できる「さわれる動物園」が開設された。子どもたちはライオンやキリン、クマ、オランウータンなど多様な動物たちの感触を確かめ、笑顔で学んだ。 模型は埼玉県寄居町の田中博さん(75)が寄贈した。20代の頃に盲学校の子どもが苦労して電車通学する姿を目の当たりにして「いつかみんなの力になりたい」と誓ったという。退職後に東京から寄居に移住して点字を学び、点訳ボランティアに取り組んでいる。 その中で「特に全盲の子は、動物の姿を知らないまま一生を終えてしまいかねない。子どもたちに動物の姿を教えてあげたい」と発案。2023年10月に同県川越市の特別支援学校に模型を贈ったのを皮切りに、各地に模型を寄贈する「盲学校にトラ・ライオンにさわれる動物園を作ろうプロジェクト」を始めた。福島県立視覚支援学校は7校目で、今年5月に田中さんから動物園開設を働き掛けた。 県立視覚支援学校は申し出を快諾。10畳の畳敷きの教室を常設の「さわれる動物園」にして「腹ばいになったり横になったりして動物たちと触れ合ってほしい」(佐藤清悦校長)。模型は海外から輸入して、乳牛は乳房を備えるなど精巧な作り。子どもたちはキリンの頭を触って背比べしてみたり、模型を触ってみてどの動物か推測してみたりして思い思いに楽しんでいた。 同校小学部4年の菅野風翔(すげのふうが)さん(10)は「ライオンは大きかった。本物の牛も触って牛乳を搾ってみたい」と笑顔。中学部3年の加藤千翔(ゆきと)さん(15)は「こんなにモフモフしているんだなと驚いた。動物の姿がイメージできました」。 小学部の高橋和代教諭(54)は「授業の中でも動物は出てくるので、学校に剥製がある場合は触って学んでもらえるが、それ以外は説明が難しいし、本物の動物はなかなか安心して触れない。こうして実際に自分の手を動かして学べる環境を整えてもらい、本当にありがたい」と感謝していた。【錦織祐一】