【実質「1人4万円の給付金」がもらえる!?】個人事業主が「定額減税」を受けるには?税理士がわかりやすく解説
個人事業主が「定額減税」を受けるには、どうすればよいのでしょうか? 板山翔税理士がわかりやすく解説します。
――私は個人事業主ですが、6月から始まった定額減税って、どうやったら受けられますか? 板山翔税理士:「定額減税は本人と扶養家族1人あたり4万円(所得税3万円+住民税1万円)減税してもらえる制度ですが、所得税の方は予定納税や確定申告をするときに定額減税が受けられます。住民税の方は減税されたあとの納付書が届きますので、特に手続きは不要です。減税しきれなかった分は、所得税分も住民税分も合わせて自治体から給付金として支給される予定です。」 YouTube「税理士ショウの超わかりやすいビジネスQ&A」>>
把握すべきは「定額減税の合計額」と「定額減税を受ける流れ」
令和6年6月から始まる定額減税ですが、確定申告が要らない給与所得者については、6月以降の給与から源泉徴収される所得税や住民税が減額されていくため、会社の方で給与計算や年末調整をしてもらえます。 しかし、個人事業主は自分で所得税の確定申告をするときに、定額減税の計算をしないといけません。 そのため、所得税の定額減税が受けられる時期についても、来年の確定申告期である令和7年3月頃になってしまいます。 ただし、所得税の納税額が大きく、今年の7月と11月頃に所得税の予定納税をされる方は、そのときに定額減税を一部受けることができます。 一方で、年4回納付している住民税については、定額減税分を差し引かれた後の納付書が自治体から届くので、その納付書のとおりに納付すればよいため、自分で計算する必要はありません。 したがって、現時点で個人事業主が把握しておかないといけないのは、そもそも定額減税を合計いくらしてもらえるのかなどの制度の仕組みと、所得税の予定納税や確定申告で定額減税を受ける全体の流れですので、今日はこれらをわかりやすく解説していきます。
【個人事業主向け】定額減税の仕組み
(1)定額減税の対象者 定額減税が受けられるのは、合計所得が1,805万円以下(給与収入のみなら年収約2,000万円以下)の居住者です。合計所得はたいていの場合、確定申告書第一表の所得金額等の「合計(12)」欄を見ればわかります(図表1)。 分離課税の所得がある方や、純損失の繰越控除などを受けている方は、(12)の金額がそのまま合計所得とはならないのですが、説明すると長くなるので今回は割愛します。 とにかくこの(12)の金額が1,805万円を超える方や、海外に住んでいる非居住者の方などは定額減税が受けられません。 (2)定額減税の金額 定額減税の金額は、本人と扶養家族1人あたり4万円(所得税3万円+住民税1万円)です。例えば世帯主である夫と扶養の妻、子供2人の4人家族であれば16万円(4万円×4人)の定額減税が受けられます。 (3)扶養家族の範囲 ここでいう扶養家族(同一生計配偶者+扶養親族)とは、合計所得が48万円以下(給与収入のみなら年収103万円以下)の居住者です(青色事業専従者と白色事業専従者は除く)。 (※合計所得が48万円を超える家族は、その家族自身に所得税や住民税がかかるため、本人が定額減税を受けることになります。) 配偶者控除や扶養控除の対象となる控除対象配偶者や控除対象扶養親族とは範囲が違うので、まったく別物と考えた方がいいでしょう。 例えば16歳未満の子は扶養控除が受けられませんが、定額減税は16歳未満でも受けられます。 逆に非居住者でも配偶者控除や扶養控除は要件を満たせば受けられますが、定額減税は非居住者である時点で対象外です。 また、世帯主の合計所得が900万円を超えると配偶者控除は減額されていきますが、定額減税は配偶者の分も満額受けられます。 定額減税では、とにかく年収103万円以下の居住者であれば、事業専従者でない限り扶養家族としてカウントしてもらえると覚えておきましょう。 (4)定額減税される年の違い 定額減税1人4万円のうち、所得税1人3万円分については「令和6年分の所得税」から、住民税1人1万円分については「令和6年度分の住民税」から減税されます。 この文章だけ見れば同じ年の税金が減額されるように見えますが、「令和6年分の所得税」は令和6年(令和6年1月1日~令和6年12月31日)の所得から計算され、令和7年3月の確定申告で納税が完了します。 一方で、「令和6年度分の住民税」は前年の令和5年(令和5年1月1日~令和5年12月31日)の所得から計算され、令和6年6月・8月・10月、令和7年1月の年4回に分けて納付します。 つまり、「令和6年分の所得税」は令和6年の所得をもとに、「令和6年度分の住民税」は令和5年の所得をもとに計算されているため、違う年の所得から計算された税金を減額することになります。 したがって、(1)世帯主の合計所得は1,805万円以下か? (2)の扶養家族の合計所得は48万円以下か?などの所得の判定についても、所得税の方は令和6年の所得をもとに、住民税の方は令和5年の所得をもとに判定されます。 扶養親族の人数についても、「令和6年分の所得税」は令和6年12月31日時点、「令和6年度分の住民税」は令和5年12月31日時点の人数でカウントされるため、令和6年中に子が生まれた場合、その子は所得税3万円分の定額減税の対象にはなりますが、住民税1万円分の定額減税の対象にはなりません。