「究極の孤独」と言われる《死》と立ち向かうにはどうすれば…良い意味で「あきらめる」方法
累計188万部の大人気シリーズ『おとなの週刊現代』が大幅リニューアル!週刊現代で大反響だった記事の中から、相続や在宅介護など、「死後の手続きと生前準備」にまつわる記事を、加筆のうえ、ピックアップ。 【マンガ】「死ねばいいのに」モラハラ夫に悩む女性が我が子をネットに晒し始めた理由 〈第1部 知らないと損する死後の手続きの新常識〉、〈第2部 今日から始める生前準備のすべて〉、〈第3部 身の回りの整理整頓。人生の最期を考える〉の三部構成からなる『おとなの週刊現代 2024 vol.4 死後の手続きと生前準備』 (講談社MOOK) より一部抜粋・再編集して、人生の最期で失敗しないためのノウハウをお届けする。 『もしあなたが《余命宣告》を受けたらどう行動するのが正解か…? 美しい最期を実践するための「10の心得」』より続く
「死ぬのがこわい」を克服するには?
訪問看護やがん患者などの病床訪問に取り組む浄土宗願生寺(大阪市)の大河内大博住職には、忘れがたい記憶がある。 「その女性は70代でがんを患ったのですが、『治療はしない』と決めていらっしゃいました。終末期に入り、私がチャプレン(病院などに勤務する聖職者)として勤めていた病院の緩和ケア病棟に入院されたのです。 私が病室にお邪魔したとき、女性の机の上にデジタルカメラがひとつ置いてありました。『あなた、見てご覧なさい』と言って見せてくれたのが、病室の窓から眺めた風景を撮った写真でした」 女性は写真を毎日撮っていた。大河内氏には、どれも何の変哲もない、同じ街の風景を写したものにしか見えない。だが彼女は笑って言った。 「『あなたには、どれも同じ景色に見えるでしょう?でも私には、毎日ぜんぜん違って見えるのよ』と。衝撃でした。 私は僧として、普段は法話などで『命は有限である』とか『この世は諸行無常である』などと説いているくせに、毎日見ている風景が変化していることにさえ気づいていない。つまり『昨日と同じように今日があり、今日が来たようにまた明日も来る』と、自分の生を当然のものだと思いこんでいたわけです。 しかし、命の限りを知っているその女性には、明日は来ないかもしれない。だからこそ、一日一日、一瞬一瞬を愛おしみ、大切に生きることができている。まさに、仏教の『刹那』の境地(ほんの短いあいだにも、万物は流転していると理解すること)に達しておられると感じました」