SHAZNA、ラクリマ、マリス、F◇C…番組から生まれた「ヴィジュアル系四天王」偏見の矢面に立たされた彼らの真の実力
■ FANATIC◇CRISIS 名古屋系代表格のバンドとして シングル「SUPER SOUL」でメジャーデビューしたFANATIC◇CRISIS。カジュアルでポップなビジュアルと、硬派で強いメロディを持った代表曲「火の鳥」(1998年7月リリース)といった印象も強いが、インディーズ時代はダークで退廃的な名古屋系バンドであった。 名古屋系とは、もともと“名古屋シーン出身のバンド”という意味で使われていた言葉だが、インディーズ時代の黒夢、Laputa、ROUAGEら、頽廃的でダークな雰囲気を持つバンドが多かったことから、“名古屋特有の様式美”という意味で使用されるようになった、ヴィジュアル系を細分化した言葉である。 そんな名古屋系を代表する名盤と言えるのが、1994年12月にリリースされたFANATIC◇CRISISのインディーズアルバム『太陽の虜』だ。 オープニングを飾る「黒い太陽」のイントロのギターから不穏さを掻き立ててくる。ダークな楽曲の世界観を彩っていくデジタルサウンドはギターのShunによるもの。クレジットがギターシンセになっていることも強いこだわりを感じる部分だ。 ゆったりとしたテンポとゴシックな雰囲気を醸す「P.E.R.S.O.N.A」、フランジャーの掛かったギターが支配するサイバー感を放つ「Pacifist」など、そのダークさが支配するアルバムの世界観はメジャーデビュー以降から遡った人にとっては驚きもあったことだろう。 『太陽の虜』は5000枚限定でリリースされるも完売。翌1995年1月に2nd Pressがリリースされた。その際に追加された新曲「Disappear n'」は、名古屋系期のFANATIC◇CRISISの極めつきと言える曲。1コードで引っ張っていくギター、エフェクティヴなサウンドプロダクトが大きなフックとなっている。 総じてゴシックでデカダン、サイケデリックロックにも通ずるアプローチを感じるなど、バンドの多角的な音楽への姿勢に溢れた作品である。