20代でも要注意!「老眼」は生産性を奪う 眼科医が解説、自分でできる対策とは
企業には「情報機器作業健診(旧:VDT健診)」を行ってほしい
――「改正高年齢者雇用安定法」により、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となり、今後働くシニアがますます増えていくことが予想されます。老眼と付き合いながら仕事を続ける従業員に対して、企業はどのようなサポートをすればいいのでしょうか。 最も理想的なのは厚生労働省が定める「情報機器ガイドライン(旧:VDTガイドライン)」(※2)に従って、作業時間や一次休止時間を管理し、基準に適合した椅子や机などの作業環境を整えたうえで、「情報機器作業健診(旧:VDT健診)」を受けられるようにすることです。「情報機器作業健診」とは、パソコンなどの情報機器端末を見て仕事をする人の体や目を調べる診察のこと。罰則規定がないこともあってか、情報機器作業健診を実施している企業はまだまだ少ないのが現状です。 コストがかかるのですぐには難しいという場合は、まず目と画面の距離を確保できる環境を整えることが重要です。目と画面の距離は、画面の大きさに比例します。そのため大きなモニターやデュアルモニターを使えるようにすると、その分大きな文字で表示できるので、目の負担を軽減できます。 モニターの位置が高すぎるのも負担になるため、目の高さと同じか、15度下までの範囲に収まるよう、椅子や机の高さを調整できるものにするといいでしょう。特に在宅勤務などで長時間オフィス以外の場所で作業をする場合、なるべく目に負担のかからない環境を整えるよう意識したいものです。 他にも、乾燥を防ぐためにオフィスに加湿器を設置することや、見通しのよい広いスペースを用意することも効果的です。 オフィス環境を急に変えることが難しい場合は、目の疲労や乾燥を防ぐため、1時間に1回画面から目を離して遠くを見る、10分から20分に一度は意識的にまばたきをする、といった習慣を定着させるところから始めてみてください。 老眼は治せませんが、眼鏡などで適切に補強すれば、仕事ができなくなることはありません。目に過度な負担がかからないように作業時間や作業環境を意識する、手元が見えにくくなってきたら早めに老眼鏡を使う、食事や睡眠など基本的な生活習慣を整える。従業員が老眼とうまく付き合っていけるように、企業としてサポートできるといいですね。 ※2 「情報機器ガイドライン(旧:VDTガイドライン)」の厚生労働省資料 https://www.mhlw.go.jp/content/000539604.pdf ・情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインについて(基発0712第3号) https://www.mhlw.go.jp/content/000658237.pdf ・「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を策定しました(リーフレット) https://www.mhlw.go.jp/content/000580827.pdf ・情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドラインの概要(パンフレット)
プロフィール
平松 類さん(二本松眼科病院 副院長) ひらまつ・るい/愛知県田原市出身、筑波大学附属駒場高校・昭和大学医学部卒業。彩の国東大宮メディカルセンター眼科部長等を経て現在二本松眼科病院(東京都江戸川区)にて治療を行うかたわら、多くのテレビ・ラジオ・新聞などメディアの取材にも精力的に応じている。著書は『1日3分見るだけでぐんぐん目がよくなる!ガボール・アイ』(SB クリエイティブ)、『老眼のウソ』(時事通信社)『視る投資』(アチーブメント出版)、『目の老化を自分で防ぐ!』(内外出版社)など多数。医学博士・眼科専門医。YouTubeチャンネル登録者数27万人。