20代でも要注意!「老眼」は生産性を奪う 眼科医が解説、自分でできる対策とは
食事・睡眠・運動も目に影響する
さらに、食事や睡眠などの生活習慣も重要です。老眼は目の老化現象でもあります。糖尿病や高血圧など、目に関係のなさそうな病気が目の老化を早めることもあるので、注意が必要です。 甘いものや塩分を控えることは、目の健康にも効果的です。また「ルテイン」という緑黄色野菜に多く含まれる栄養素が特に目の健康に良いとされています。 睡眠時間は6時間から9時間は確保することが基本です。睡眠時間を1時間増やすと、目の回復時間が増えると同時に、目の使用時間が1時間減ることになります。目の健康だけを考えると、起きている時間を延ばすほど目にダメージが起きやすく、回復の時間が少なくなるので、睡眠時間をしっかりと確保したいものです。いびきや睡眠時無呼吸症候群がある場合は、治療を受けたほうが目の健康維持に効果的だといわれています。 さらに有酸素運動として、1回あたり30分ほどのジョギングやウオーキングを、週3回程度行うといいでしょう。ルームランナーなどを使う室内よりも、外で歩くほうが自然と遠方を見ることになるので、目の健康のためには望ましいといえます。外を歩く習慣がある人は、近視が進行しづらいともいわれています。 紫外線はカットすることが望ましいのですが、今の眼鏡のほとんどは紫外線カット機能がついているので、あまり気にする必要はありません。ブルーライトもカットすることが望ましいといわれてきましたが、ブルーライトの眼精疲労や老眼への影響は明確には証明されていないため、過度に心配する必要はないと思います。 しいていえば、夜にブルーライトを浴びると睡眠の質が低下するため、夜間はなるべく避ける。朝はむしろ太陽光に含まれるブルーライトを浴びたほうが夜に「メラトニン」というホルモンが分泌されてサーカディアンリズム(おおよそ1日の体内リズム)が整い、睡眠の質が向上するといわれています。 ――老眼の治療法はあるのでしょうか。 老眼は目の老化現象なので、根本的な治療方法はありません。老眼の症状を軽減するとされる点眼薬がアメリカでは使用されはじめていて、日本でも導入が検討されているようですが、現状では、日本でできる老眼への対処法は老眼鏡などを使うか、手術するかの2種類です。 視力矯正の手段として眼鏡以外に遠近両用のコンタクトレンズもありますが、日本ではまだあまり知られていません。遠近両用コンタクトレンズは眼鏡とは構造が違い、多焦点レンズといって遠くと近くへ同時にピントが合うようになっていて、脳がどちらを見るか取捨選択します。このコンタクトレンズには、合う人と合わない人の個人差が大きいという特徴があります。脳がうまく適応できない場合は、全く役に立たないと感じる人もいるようです。また眼鏡と違ってフレームがないので、重さがなく視野も広くなります。デメリットとしては、着け外しが眼鏡よりもめんどうなことと一般的なコンタクトレンズより値段が高い点が挙げられます。慣れれば使えるようになる場合もあるので、使用するなら早いうちから始めたほうがいいでしょう。 手術には、レーシックやICL(眼内コンタクトレンズ)の遠近両用を入れるという方法もありますが、圧倒的に多いのは白内障の手術をする際に多焦点レンズも入れるという方法です。これが老眼関連の手術全体の約98%を占めています。 白内障は水晶体が白く濁って硬くなる病気です。物が見えにくくなったり、かすんだり、二重に見えたりするなど、人によって症状はさまざまです。目の老化現象として最も一般的なもので、50歳で約半数、80歳以上ではほとんどの人が発症するほどです。そのため、老眼鏡やコンタクトレンズで補強し、白内障になった際に多焦点レンズを入れる手術をすることが、現状負担の最も少ない方法だといえます。 自動でピントを調節する次世代型眼鏡の開発も進められているようです。実現すれば、眼鏡をかけ替えることなく、自動的に遠距離から手元まで見たい場所にピントを合わせてくれるようになるかもしれません。