増え続ける市営住宅の空室問題を解決!? ひとり親やDV被害者、外国人など住まいに困っている人への居住支援、生活協同組合が窓口に 兵庫県尼崎市「REHUL(リーフル)」
市営住宅を、民間の支援団体に賃貸するしくみとは
事業開始当初、目的外使用の承認を受けられた住戸は、建て替えや廃止を控えている約1000戸のうちの350戸ほど。各支援団体が尼崎市に支払う使用料は、1室につき、なんと月6500円です。この金額で借りられる民間住宅はほぼないに等しいので、支援団体からは「本当にありがたい」と感謝の声があがりました。 入居希望者の受け付けから部屋の調整などの入居者のコーディネートを行うのは、ネットワークグループに加盟する居住支援法人(※)等の団体です。 間取りは2DKや3DK、広さは45~60平米程度と幅があり、尼崎市は、実際に入居する人数や立地など、支援団体からの希望を聞きながら提案をします。そして実際に現地を見て借りたいとなったらREHULネットワークグループの一員として各支援団体から「行政財産の目的外使用許可」を申請して、市が許可するという流れです。 ※居住支援法人:住宅セーフティネット法に基づき、住宅の確保に配慮が必要な人が賃貸住宅にスムーズに入居できるよう、居住支援を行う法人として各都道府県をはじめとする自治体が指定する団体等 REHULの事業の流れ。各団体が尼崎市から直接借りる形をとり、それぞれの責任の所在を明確にする契約形態になっている。尼崎市にとっては、空室を借り受ける団体の主(しゅ)の窓口はコープこうべとなっており、手続きをスムーズに進めることが可能に。 ただ、尼崎市は状態の良い住戸から貸し出しているため、事業開始当初はハウスクリーニングを行うだけですぐに住める住戸が多かったのですが、提供する戸数が増えるにつれ、最近ではある程度のリフォームを必要とする住戸も増えてきているそう。市から支援団体への賃貸は、現状渡し(物件にある不具合などを修繕せず引き渡すこと)が条件となっているため、リフォーム費用は借り受ける支援団体の負担です。 「改修費用なども含めて利用者(支援団体を通じて入居する人)からは各団体で設定している家賃と、自治会費や共益費をいただいています。しかし、それだけで各支援団体が活動を継続していけるかというと難しいのが現状です。さまざまな助成金を受けながら、運営費用を捻出しています」(コープこうべ・前田さん)
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