増え続ける市営住宅の空室問題を解決!? ひとり親やDV被害者、外国人など住まいに困っている人への居住支援、生活協同組合が窓口に 兵庫県尼崎市「REHUL(リーフル)」
REHUL(リーフル)を始めるきっかけとなったのは、支援団体の声
なんとかこの問題を解決できないかと生まれたのが、「REHUL」です。 REHUL事業開始前の2021年9月ごろ、尼崎市は自治会活性のための方法を模索していました。 「いくつかの団体に相談する中で、コープこうべさんから『住まいの確保に困っている支援団体がある』という話を聞き、空いている住戸を貸し出すことが解決につながるのではないかと考えたのがきっかけでした」(尼崎市・篠原さん) コープ(生活協同組合)というと、スーパーや宅配、共済(保険)事業のイメージが強いですが、その定款でも「公共の福祉を増進するとともに、健全なる社会の確立に貢献することを目的とする」とある「社会活動団体」です。地域とのつながりやネットワーク力を活かして、居住支援をはじめとする社会課題の解決にもあたっています。 空室となっている物件は、1970年代~1980年代に建てられたものが多く、尼崎市は見た目の古さや耐震性の問題を気にしつつも、まずはコープこうべや他の支援団体に、空室となっている市営住宅を見てもらいました。 「民間の賃貸住宅を探すと、低所得など事情のある人が借りるには家賃が高く、借りられる部屋となると木造で古かったり、床が傾いていたりと状態の悪い部屋も多いんです。市営住宅は古いといっても、鉄筋コンクリート造でしっかりしていて十分使えます。私たちとしては、非常にもったいないという思いでした」(コープこうべ・前田さん)
簡単にはいかなかった、自治体と支援団体協働へのハードル
しかし、自治体が特定の支援団体へ公営住宅を本来の目的以外の用途で貸し出すことは、簡単ではありません。 「尼崎市としては公有財産を貸し出す以上、適切な団体を公募で選定し、『目的外使用許可』の手続きをする必要がありました。この手続きを取ると早くても提供開始まで半年~1年はかかります。コープこうべとはすでに包括連携協定を結んでいたため、公募を行わずにスピーディーに進められると考え、私たちは最初、コープこうべに窓口になってもらい、一括で借りていただくしくみを考えました」(尼崎市・篠原さん) ところが、コープこうべ側としては、市から一手に借り受け、そこからさらに他の団体へ貸し出すのは「何かトラブルがあったときの責任が重く、リスクも大きい」と、コープこうべの中でも慎重な意見が大半でした。 そこで尼崎市は、コープこうべだけがリスクを負うのではなく、それぞれの団体の責任の所在を明確にする形を考えました。コープこうべを筆頭とする「ネットワークグループに属する団体」については、コープこうべと同等と見なして各団体に市営住宅の使用許可を出せるようにしたのです。篠原さんたちはこの仕組みを整えるため、各関係部署への調整に最も時間を要したそうです。
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