「実家の片づけを拒む90代の母」「免許返納を渋る70代の父」“高齢の親の困った”に【ナッジ】で解決する方法を行動経済者が解説「認知バイアスの特性を利用する」
実例4「70代後半の父親が運転免許の返納を嫌がる」(50代男性)
「忘れっぽくなった父に車の運転免許を返納するようにすすめていますが、いっこうに受け入れてくれません。事故に遭ってからでは遅いと家族で心配しています。いい説得方法はありますか?」 対処法「強い認知バイアスがある場合は目標設定を低く」 「運転免許の返納手続きは、手続きが面倒(現在バイアス)だし、別にこのままでいい(現状維持バイアス)と感じるものであり、本人には返納する動機が生まれにくいのです。 お父さんには、目標を『免許返納』にするのではなく、『車を運転しないこと』に変えてみてはいかがでしょうか? マイカーが目の前にあると、やはり運転したくなりますよね。まずは『車の点検があるから』と言って、車を目の前から見えない場所へ移動するのがおすすめです。 今までもお父さんは車がない生活を経験したことがあったでしょうから、意外に受け入れてくれるものです。その際、『代車は1日1万円かかるので、移動にはタクシーを使ったほうが割安だよ』と説明し、タクシーを使うのに慣れてもらうとよいですよね。 『タクシーだなんてぜいたく』と考える人が多いですが、実際にはマイカーの維持費のほうが高いこともよくあります(事故を起こすことを考えたら、比較にならないくらいマイカーのコストは高いです)。どうしてもタクシー代を払うのに抵抗があるのなら、スマホアプリの使い方を教えてあげるとよいですよね。カードから自動引き落としなので、お金を払うストレスから解放されます」 *** さっそく記者も実家の片づけをめぐって衝突しがちな母(90代)にナッジを活用してみた。 いつもなら、「これもう古いから捨てていい?」と言ってしまっていたが、「これを廊下に置いておくと転びそうだから、納戸によけておくね」と言い方を変えてみると、母は「はい、お願いね」と明るい受け答えをしてくれた。これからはナッジの手法も採り入れて、介護生活を円滑にしていきたいと感じた。 取材・文/本上夕貴
【関連記事】
- 高齢者の「できない」を「できる!」に変える自立支援のためのアイテムスイッチ5選【福祉用具専門相談員が解説】
- 親に大事な話をするのは「おめかしして外出したときがいい」注目の人を動かす手法「ナッジ」の介護シーンでの活用方法を専門家“ちくりん先生”が解説
- 《1時間の運動で寿命が3時間延びる!?》『ゼロトレ』著者・石村友見さん伝授 「わかっているけど、続かない」を乗り越えて運動を習慣化する3ステップ
- 「介護が必要になっても自立したい親」と「家族で介護したい子」 調査でわかった親世代子世代の意識のズレ「まずは会話が大切」と識者
- 「嘘をつくときは右上を見る」「競争心が強い人は早口」会話中の態度でわかる心理状態【心理学者監修】