「腸内細菌」と「うつ病」の意外すぎる「関係性」…患者の「腸内で減少」する「2種類の細菌」が「突破口」を暴き出す
プロバイオティクスを摂取した結果…
8週間のプロバイオティクスの摂取により、3種の心理検査で評価されるうつ症状については改善効果が見られませんでしたが、認知反応性については統計的に有意に低下しました。この認知反応性とは、ネガティブな気分に対して過剰に反応しやすい傾向を意味します。例えば、うつ病の患者では、憂うつなときは自分の少しの間違いも許せなくなってしまうような傾向があります。この傾向が、8週間のプロバイオティクスの摂取で改善したのです(※参考文献6-14)。 抗うつ薬治療を受けているうつ病患者にプロバイオティクスを投与し、その効果を見るといった試験も行われました。具体的には、8週間、通常の抗うつ薬治療に加え、3種類の細菌(ラクトバチルス アシドフィルス、ラクトバチルス カゼイ、ビフィドバクテリウム ビフィダム)を混合したプロバイオティクスカプセルを服用したグループ(20人)とプラセボを服用したグループ(20人)で、うつ病の症状のスコアが比較されました。 その結果、ベック抑うつ質問票で評価されるうつ病症状が統計的に有意に改善しました。また、炎症反応が起こることで産生されるC反応性タンパク質(CRP)についても、プロバイオティクスを投与したグループでは、プラセボのグループと比較して有意に症状が改善しました(※参考文献6-15)。 これらの研究成果から、ビフィドバクテリウム属とラクトバチルス属で構成されるプロバイオティクスの摂取が、これらの細菌数の低下を改善し、うつ病の治療に有効である可能性が示唆されています。しかし、これらの研究成果は、うつ病とプロバイオティクスとの相関関係を示しただけであり、また、試験に参加した被験者の数が少ないため、今後、より大規模な試験を行い、治療効果やその作用機序を解明する必要があります。 ※参考文献 6-11 Valles-Colomer M et al.,Nature Microbiology4, 623-632, 2019. 6-12 Kelly JR et al.,Journal of Psychiatric Research82, 109-118, 2016. 6-13 Aizawa E et al.,Journal of Affective Disorders202, 254-257, 2016. 6-14 Chahwan B et al.,Journal of Affective Disorders253, 317-326, 2019. 6-15 Akkasheh G et al.,Nutrition32, 315-320, 2016.6-7 Al-Haddad BJS et al.,JAMA Psychiatry76, 594-602, 2019. * * * 初回<なぜ「朝の駅」のトイレは混んでいるのか…「通勤途中」に決まって起こる腹痛の正体>を読む
坪井 貴司(東京大学大学院総合文化研究科教授)